新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。一般社団法人日本カイゼンプロジェクト会長として、新年のご挨拶を申し上げます。

残念ながら、今年は新年早々に大型地震や飛行機事故という悲しい出来事が発生しました。影響を受けた皆様やそのご家族に、心からのお見舞いを申し上げます。

ここ数年、日常面でも仕事面でも変化や進化が続き、対応に追われるように過ごしてきたように感じます。3、4年前には最先端であったことが今では常識になっているものもあり、今年こそは後回しにしていたことや、やらなくてはならなかったことを「実行しなくてはいけない」と現実味を帯びてきた年でもあります。これまでの経験を大切にしながらも、目まぐるしい変化に対応するためのカイゼンを実行し、新たなチャレンジに取り組むことが求められます。

私が今年実行したい、または強化したいチャレンジは、日本カイゼンプロジェクトを立ち上げた理由とも関連しています。それは、日本の中小の製造業の地位を向上させることです。もちろん、世界で活躍する素晴らしい中小企業も多くありますが、平均的には大企業と較べると、高騰した原価分程度しか値上げもできていない現状も多く見受けられ、賃上げ額や利益率といった点で見劣りしていると思います。日本の製造業が活発であった時代と較べ、現在は生産量の減少と人手不足に直面しており、従来の方法を続けるだけでは十分ではありません。

中小企業が、発注元となる親会社から言われたことをそのまま実行する下請けの立場であると、値下げ要請に応える必要があり、納期の短縮を求められれば残業が増えることもあり、なかなか強い企業になれません。ここで必要なのは、独自の製品・新たな技術を持ち付加価値に見合った価格設定ができることや、IT化・自動化などを用いた高い生産能力やDXなどを用いた情報力、管理面で強みを持ち大企業と渡り合える交渉力を持つことなどです。

だいぶ以前のことですが、ドイツのメルセデスベンツの工場でカイゼン指導をしていた時に、協力メーカーにも立ち寄りました。そこは車のフロントマスクを作る工場で、ベンツだけでなく、BMWやアウディなど他社の製品も作っていました。社長と話すと、「ベンツやBMWなどの最終メーカーは組み立ての会社で特に技術を持っていないのだから、俺たちがいないと仕事ができない」と自信たっぷりに話していて、日本とは随分違うな…と感じたことを思い出しました。日本とは取引の構造が同じではありませんから単純に良し悪しを語ることはできませんが、日本でも対親会社の関係ではこうあるべきだと思います。

このような問題を打破するヒントとして、各種の理論や実例といった一般情報はありますが、何より役に立つのは経験に基づいたリアルな話だと思います。自社内での議論に加えて日本カイゼンプロジェクトの会員企業の皆様の横のつながりを強化することで、お互いが必要とする情報を活用し合える場を作りたいと思います。社長同士、技術者同士、カイゼン者同士といった思いを同じくする仲間の間で、皆様が持つ強みや貴重なご経験などを教え合うこと、困りごとを助け合うこと、あるいは協力して新しいことを生み出すことで、中小製造業のレベルアップができるのではないかと考えています。日本カイゼンプロジェクトは多様性に富んだ会員の皆さまで構成されています。変化が続く時代だからこそ、多様な情報や経験、判断が役立ちます。教えたり教わったりする場を活用して大きな飛躍を期待しています。私も教える側としてだけではなく皆様とご一緒に学んで参りたいと思います。


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫