ヒューマンエラー対応の職場づくり 第1回

1.ヒューマンエラーは、些細なことなどの積み重ねで発生する

 あらまあ!また忘れてしまったとか、ええっ!またまたミスしたなど、日常生活でも仕事においても、ミスの連続の日々と仲良く?誰でもがお付き合いしているのが、ヒューマンエラーです。嘘でしょ!と言われるかもしれませんが、面白いほどよくわかる事例ですので、セミナーの時に使う松田マジックを2つ紹介します。

 1つ目は、「さあ皆さん、おはようございます。このセミナー会場を見渡してもらいます。『黒いもの』がたくさんありますが、椅子、ハンガーなど5個以上数えてください。ようーい、はじめ!」と掛け声をかけます。10秒で十分です。「さて、数えましたね?」と参加者の顔をうかがいながら確認します。「さて、目を閉じてください。これからクイズを出します。先ほどは、『黒いもの』を探してもらいました。クイズは、丸いもの(四角でも、赤、白など何でも構いませんが、予め数えておいてください)もありましたね。3つ思い出した方は手を挙げてください♪~」と投げかけます。
 皆さん困った顔をして、頭を抱えます。10秒くらい待っても誰も手を挙げる人はいません。「皆さん、会場を見たはずですね!誰も手が挙がりませんねえ。それでは、目を開けてください!」と手を大きく叩きます。参加者全員が、目を大きく開けて丸いものを探します。キョロキョロした人を指名して、「目を開けて何を探しましたか?もしかして丸いものですか?」。指名された人は、バツが悪そうに「そうです」とボソボソと答えます。
 部屋を見渡した時に色々と見たのですが、『黒いもの』だけを集中して探したから、他のものは一切記憶から除外したのです。パッと目を開けた瞬間に「丸いものはどこだ?」と探したのです。

 もう一つの事例です。腕時計で時間を確認してもらいます。「いい時計をしておられますね。今何時ですか?」と聞きます。「11時45分です!」「ありがとうございます。」と言ってその人の時計を軽く握って見えなくします。「12時のところの文字盤の表示はどうなっていましたか?針の色は?」。持ち主は、応えられません。苦し紛れに「アラビア数字の1と2ですぅ~。針の色は覚えていません、、」としどろもどろになります。手を外して見せてあげるとまったく違う答えに対し、「昨日買った時計ですか?」「もう3年になり毎日使っています。トホホ~」。嘘のようで本当の話ですが、2つとも実験してみてください。人は意識しないと、今見たことも記憶に残らないのです。また知識がないことには、意識もできません。ですから、指導・教育・訓練が大切なのです。

 嘘のようで実際の話ですが、それほど意識しないと記憶に残らないのです。これは脳の構造に関係しているようです。朝起きてどっちから起きようかな?など小さな判断を毎日2~3万回もしています。些細なことや意識しないことは、脳はパンクしないようにスルーしているそうです。
 私たちの生活や職場に、積み重なってヒューマンエラーつまりポカミスがはびこることになります。その時には問題なかったものが、次第にヒヤリハット、小さな事故や不良の発生と目に見えるようになり、やがて大きな事故やクレームになっていきます。小さいうち、問題になる前に対処することがとても大切なのです。残念ですが、人はお尻に火が点いて慌てないと行動できない動物なのです。その時に慌てて想定外の行動をして大きなミスを犯すのです。