11月のご挨拶

11月になりました。

今月は「品質月間」ですので、私が最近品質について考えていることを書いてみたいと思います。

“Made in Japan” は長らく品質の証と言われ、世界中で高い評価を受けていました。これは日本が独自の品質管理組織であるQCサークルなどを活用し、世界に類を見ない現場中心の品質管理体制を確立してきた結果です。しかし、最近では海外も品質レベルを上げており、“Made in Japan” は以前ほどの評価を得られていないように思えます。

品質月間になると、多くの工場ではポスターが貼られ、品質標語が掲示されます。これらはもちろん意味があることですが、品質についての一般的な考え方の啓蒙活動的であり、これだけで大きな成果が生まれるとは思えません。そこで、せっかくの品質月間なので、改めてこれからの品質について考えて、このところの停滞を一気に挽回できるような体制を整えたいと思います。

アメリカの調査機関のJ.D.Power 社が毎年発表する「米国自動車初期品質調査」という米国で販売された新車を対象にした品質に関する調査があります。2011年の調査では “ベスト3” は1位から順にレクサス、ホンダ、アキュラ(ホンダの高級ブランド)と日本の会社が独占し、それ以外にマツダ、トヨタ、インフィニティ(日産の高級ブランド)の3社が10位以内に入っていました。しかし最新の2023年の調査では10位にレクサスが入っているだけという寂しい結果になっています。

残念な結果ですが、何が起きているのでしょうか?実は2011年当時の品質と今の品質ではその評価の中身が大きく変わっているということなのです。2011年当時はまだ自動車そのものの機能品質(走る、止まる、曲がる、壊れない)にバラツキがあり、ここが評価の中心になりました。当時の自動車の機能品質は断トツで日本車がトップだったのです。ところがその後、他国の車も日本製の部品を使うなどして機能品質を上げ、相変わらず日本車にはかなわないがほとんど差がない状態になって来ました。

そこで現在の品質調査で差が付くポイントは、例えばカーナビが操作しやすいとか、iPhoneとの連携やデジタルのディスプレイがカッコいいといった、品質の分類でいうと魅力品質といわれる分野にシフトして来ているのです。残念ながら日本車はその面では後れを取っているということです。「よく走ること」や「壊れないこと」だけでなく、「見た目の美しさ」や「提供するコンテンツの豊富さ」なども含めて品質と捉える時代になっています。機能品質を前提として、品質評価の中心が魅力品質に移行しているということですが、これは自動車に限らずすべての分野に広がっていることだと思います。

iPhoneの開発に際して、アップル創業者のスティーブ・ジョブズはiPhoneの外観を重視したため、カメラが本体から出っ張ることを許さず技術者を大いに困らせたという話です。カメラを少し出っ張らせることでカメラの性能向上や生産性向上が容易になるにもかかわらず、外観の魅力品質を向上させるということに最後までこだわったことが、現在のNo.1の地位を獲得するのに大いに貢献したといわれています。

日本の製造業の品質カイゼン活動は、現在でも不良を減らす現場活動が中心で、外部に目を向けた活動にはなっていないことが多いように思えます。これまでの不良を発生させないという機能的な役割以外に、私たちの作る製品がお客様にとって魅力的であるかどうかも品質の一部であると考える必要が出てきているのです。これは最終製品を作っている会社に限らず、部品供給の会社においても同じです。そのことを考慮してみた時に、我社の品質はお客様にどう評価されているのか?を品質月間の機会を使って改めてチェックしてみるのはいかがでしょうか。品質の新たな側面に焦点を当てて、より魅力的な製品を提供できるように頑張りましょう!


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫