4月になりました。
街を歩くと幼稚園生から大人まで、真新しい制服やスーツを着た新入生や新社会人の姿を見かけます。皆さん初々しく思わず「頑張れー!」と心の中で応援してしまいます。私が社会人になった頃は、仲間の新人がもっとずっと多かったな…と懐かしく思い出します。私の年代(昭和20年台)の1年間の出生者数は約260万人で、今は約80万人と3分の1以下ですから当たり前ですね。少子高齢化という現実をひしひしと実感します。
さて、そのような状況下で会社経営に人材の確保がこれまで以上に重要になることは言うまでもありません。「日本企業は地球どこでも人手不足」(日経ビジネス2015年9月7日号のタイトル)というくらい働く人が少なくなっている日本で、会社経営を継続するためには「凄い生産性アップ」(日経ビジネス2018年9月17日号タイトル)が必要ですが、その実現には仕事のできる人が会社にいることが前提です。優秀な中堅が会社を辞めないことと、優秀な若手が入社してくれることの両方が求められます。
そのためには会社が働く人にとって魅力的であることが大切です。給料が高いことはもちろん望まれますが、それ以外の要素もあります。私が学生時代に習ったアメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグの「2要因理論」によると、人のモチベーション要因は「動機付け要因」と「衛生要因」の2つに分けて考えるべきだとあります。「動機付け要因」とは達成感や成長の機会などで、「衛生要因」は給料や条件・環境などです。
先日、指導先のある会社の中堅の方と話をしていた時のことです。彼の会社が最近魅力的になったと喜んでいたので理由を聞いてみると、会社でこれまで禁止されていた副業が認められたからでした。彼はそれまで会社に内緒で、以前に合格した技術士という資格の受験対策の講師をネットでしていたのだそうです。彼は現場での仕事の教え方が大変に上手で私は感心していたのですが、模擬試験の添削による受験指導も大変上手だったようです。ボランティアの気持ちで指導をしていましたが評判が高まり受講生が増え、現在の給料以上の収入を得られるプロの仕事につながるオファーも来たそうです。彼にとってこの副業は、空いた時間に受験指導をすることで指導力が高まり、その上いろいろな仕事の情報も入るので、自分の能力アップはもちろん会社の仕事にも役に立つと確信してはいたものの、転職した方がいいかもしれないという気持ちになっていたとのことでした。今回の解禁で両方の仕事に力を入れることが可能になり、彼にとっても会社にとっても副業の解禁は大きなメリットをもたらしたといえます。ハーズバーグ理論の「動機付け要因」と「衛生要因」の両方が得られたことになり、優秀な中堅幹部を辞めさせないで引き留めた事例です。
次に新入社員が会社を選ぶときに魅力を感じる要因はどんなものでしょうか?こちらをある専門家の方に聞いてみたところ、労働時間にゆとりがあり自分の時間が取れることや転勤がないといったことがとても重要視されるということでした。私は高度成長期に社会人になったモーレツ社員で「24時間働けますか?」のキャッチコピーを受け入れて長時間働いた世代です。当時は自分の家を建てるとすぐに転勤の辞令が出て、泣く泣く単身赴任をするといった話は掃いて捨てるほどありました。私も仕方がないことと思い従っておりましたが、今なら両方ともハラスメントですね。自分の生活と会社の仕事のバランスが取れていないと、人は幸せに働けないし本来の力を発揮することができません。今の若い人の考えは正しいと思いますが、私の体には昔の考えが染みついているところがあるので、私たちの若い頃とは真逆に思える今の若い人たちが魅力と思うことには少々驚かされました。改めて若い人の考えを学ぶ必要性を感じた次第です。
給料を上げることや労働環境改善などが否応なしに求められている現在、それ以外のことにもカイゼンの目を向けることは大変です。しかし将来の経営の基礎となる優秀な人材確保に向けて、1つでもいいのでカイゼンを実行することはとても大切だと思います。皆でチエを出して頑張りましょう!
日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫