9月のご挨拶

 9月になりました。少し前までは刺すような暑さが続いていましたが、少しずつ陽ざしに秋の優しさが感じられるようになりました。会員の皆様、いかがお過ごしですか。

9月は一般的には2022年度の下半期が始まる月です。これからいろいろなカイゼンを計画されておられる会社も多いことでしょう。私はカイゼンの話をするときに、しばしば「ワイワイガヤガヤ」という言葉を使います。もちろんこれは騒がしいという意味ではありません。良いカイゼンを実行するにはとても大切なことだと思っておりますが、多少分かりにくいとも言われております。そこで今月は、ワイワイガヤガヤの本質をご理解いただきより良いカイゼンができるためのヒントとして「心理的安全性」と「リバースメンタリング」の二つの言葉をお伝えしたいと思います。

最初に「心理的安全性」ですが、これはアメリカでは比較的以前から使われていた言葉だそうですが、Googleの生産性向上を目指すプロジェクトチームが、「生産性が高く、高収益を上げているチームは他のチームより心理的安全性が高い」という結果を発表したことで一気に注目を集めるようになったということです。

私はこの記事を読んでとても驚きました。残念ですが、日本は心理的安全性が低い国であると思います。学校では誰も質問をしない環境で育ち、KY(空気読めない)は嫌われるので周囲に気を使った差しさわりの無い発言をするようにしています。会議では自ら発言することはまずないのが普通です。一方でアメリカは自分から進んで何でも自由に言い合える高いレベルの心理的安全性がある国だと思っていたのです。ところが、そのアメリカを代表するGoogleが、まだ心理的安全性にはカイゼンの余地があるという発表をしたからです。これは、私達日本人はもっと心理的安全性を高める必要があるということだと考えました。

そこでその心理的安全性を高める方法ですが、それにはリバースメンタリングという方法をお勧めします。リバースメンタリングは、簡単に言うと、年長者が社内の若手に教えを乞うことです。発祥はGE(ジェネラルエレクトリック)の会長であったジャックウェルチ氏が始めたことと言われています。少し前の話ですが、コンピュータの2000年問題があった時、ジャックウェルチは今後のコンピュータの動向についてずっと勉強していたが、外部の専門家から教わるとどうもよく分からない。しかし社内の若手から教わったところ極めてよく理解できた。やはりコンピュータのことと自分たちの仕事の両方を分かる人間から聞くのが1番だと気付きました。そこで役員たちにも同様にコンピュータの話を自部門の若手に聞くことを奨励し、大きな成果を上げました。これがリバースメンタリングの始まりといわれています。アメリカではリバースメンタリングはビジネススキルとして当たり前に使われているようですが、年功序列意識の強い日本ではなかなか取り入れられませんでした。しかし若い人や技術職で口数が少ない方々が既に身に付けているデジタル化などの技術を企業に取り入れる必要性が高まり、日本でもそういった方たちから教わるリバースメンタリングは少しずつ定着しつつあります。

しかしこれは「言うは易く、行うは難し」です。何よりも聞くことが難しいのです。私もデジタルのことは若い人に教わるのが1番と考えてリバースメンターとして教わりますが、彼らからすると「この人はなぜこんなに分からないのか?」が分からないという位大きなギャップがあります。ついついこれまでの癖で「もっと分かり易く教えろ!」と言ってしまいそうになるのですが、言ってしまったらもう教えてもらえませんから、言葉に注意をして忍耐強く教えてもらえるように努力をしています。

普段は若い人に指示命令していることが多いので、逆に話を聞く機会がほとんどありませんでした。しかしこれもこれからの時代の必然です。そして、この方法を通じて、会社の全ての人の話をよく聞く訓練ができます。

「心理的安全性」と「リバースメンタリング」、両方とも当たり前のことだと思いますが、当たり前だからこそ実行が難しいということはありますね。しかしここにワイワイガヤガヤの本質があると言って良いと私は思っています。

老若男女問わず、すべての人とワイワイガヤガヤができる環境を作ってより良いカイゼンを実行致しましょう!



日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫