2月のご挨拶

 2月になりました。少し前に東京オリンピック・パラリンピックが開催されたばかりですが、もう北京冬季オリンピックが始まりました。世の中の動きは速くなっているといつも思っていますが、コロナによる例外とはいえこれまでの2年の間隔が半年に縮まったのですから驚きです。

さて、大きな変化という切り口で世の中を見てみると、多くの企業が原材料費の値上がりにとてもご苦労されています。毎日の生活の中でも、既にガソリン、電気・ガス、そして牛丼までも値段が上がっています。次いで4月には首都高速料金、6月には世界的ベストセラーでもあるカップヌードルの値段も上がるそうです。低価格帯の代表例としましては、昭和43年からずっと1本10円で売られてきた駄菓子の「うまい棒」が4月から12円に値上げされるというニュースがあり、これまでは多くの企業が努力で何とか頑張ってきたけれど今回の値上げはその規模を超えている!と実感しました。

原因は?と探ると、コロナ禍で発生した供給制約や生活様式の変化、あるいはその後の経済回復に向かう世界的な需要の拡大による価格の上昇とそれに伴う輸送コストの上昇など、世界規模での変化があるようです。すなわち、今回の変化は決して一過性ではなく、世界的にインフレの方向に経済が動いていく大きな変化の始まりなのかもしれません。改めて、モノづくり経営の仕方を見直す機会とするべき時だと感じています。

原材料の値上げにどう対応するかについて事例をあげてご紹介いたします。
まずは自社の製品の値上げができないかを考えましょう。私の指導先のO社では中国からの原材料が突然2倍近くに上がるということになりました。これまでも原材料価格はジワジワと上がっていましたがカイゼン努力などで利益が減るのを極力抑えて、値上げはしませんでした。しかし社長は精密なシミュレーションを行い、もし今回価格を上げなければ会社は絶対潰れると判断し値上げ実行を決めました。しかしどのくらい上げるかで悩みに悩んだ結果、思い切って材料の高騰分は全額価格に上乗せすることを決めました。ただ、その際に、商品の原価を材料費、加工費別にすべてオープンにして、もし材料費が下がったらその時点で価格を下げるという約束までして提示をしました。その時、同業他社は値上げをしていなかったので、その晩は寝られなかったということでしたが、幸いにも値上げが認められました。その後、堰を切って他社も値上げ申請を始めたということですが、これからはどんぶり勘定ではなく、明確な理由を示しての交渉が必要になるという事例です。

次に値上がりする材料を少しでも安く買う方法を考えましょう。当会員であるP社の事例ですが、すべての材料購入品の値段と買い方をチェックしました。すると合い見積もりを取っていなかったり、購入量が増えていたにもかかわらず価格がそのままであったりしたものが予想を超えて多くあったのです。P社では社長のリーダーシップの下、全社で購入品費の低減を行い、期待をはるかに超えたコストダウンが実現できました。分かりやすい事例として会社で使う携帯電話の料金がなんと半額になったということでした。

あるいは共同仕入れをすることで、材料の仕入れ量を増やし仕入れ価格を下げることはできませんか。もし自社の複数の工場が別々に材料を買っていたら購入を一本化してまとめて発注する、あるいは近隣の同業者と組んで共同仕入れをすることで原材料を下げるということです。

そしてこれまでやってきたカイゼン活動の更なるパワーアップも大切です。生産性向上、品質向上、リードタイム短縮、在庫削減、といった主要な活動はこれまで通りですが、それぞれの部門が別々にカイゼンをするのではなく、一緒に活動すると更に大きな効果が出ることがたくさんあります。例えば、設計変更をすることで加工工数や組み立て工数を下げることができないか?部品点数を減らせないか?材質を変えて材料品種を減らせないか、安価な材料を使えないか?あるいはお客様と連携して物流の荷姿を検討して載せ替えや運搬を減らせないか?過剰品質の要求を下げられないか?などより広く深い活動を探求していけたらいいと思っています。Y社はこれまでお客様から指定されたロットサイズで商品を納入していましたが、カイゼンを進めた結果一個づくりができるようになり、ロットでなくても一個ずつの注文に対応しますというオファーをしました。お客様は在庫が減るので大喜びです。そこで交換条件で、手形サイトを2か月短縮してもらいました。これによりキャッシュを突然に増やすことができました。

今回の大きな変化は私たちのモノづくりも大きく変えなさいという信号だと思います。これまでのカイゼンを更に広く、そして更に深く進歩させていきましょう!

今回、例としてお示ししたカイゼンについて、日本カイゼンプロジェクトでは具体的なサポートをして参りたいと考えています。お問い合わせをお待ちしております。




日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫