9月のご挨拶

 開催前にいろいろな問題が顕在化して開催すら心配されたオリンピックでしたが、大きな事故もなく無事に終了し、その上日本選手の大活躍もあり、まずは一安心、よかったです。しかし、かねてから大問題のコロナは収まるどころか私たちに及ぼす影響を更に強めています。国内では緊急事態宣言の対象地域が広がり、いろいろな面で心配な気持ちを持つ人を増やしています。一時的なことではありますが、ワクチン接種を受けた方に出る副反応で、接種後は数日の休みを取ることになり仕事が回らずに困っているという事例も多く聞きます(ちなみに私は二回目接種の後の副反応で39.5度の熱が出て、2日間動けませんでした)。またアジア地域の自動車部品工場でのコロナ休業が増え部品の納入が遅れ、日本の自動車会社の生産ラインの稼働が大きな影響を受けています。半導体不足の次に襲ってきたコロナ由来の大問題です。

全てが初めてのことばかりで、手の打ちようがない状態に追いやられてしまっているともいえる厳しい状況ですが、私たちはこの状況から新たな一手を見出してモノにする必要があります。みんなで考えて今ならではのアイデアを出して実行をしたいのです。例えば、今が私は自社のカイゼン活動のチェックを行い、レベルアップを図る良い時期であると考えます。そこでカイゼンの基本中の基本の見直しの徹底をご提案させていただきます。

まず今はムダ中のムダ、キングオブムダといえる「つくり過ぎのムダ」がないかを見分けられるベストの時期です。例えば、現在自動車でしばしば起きていることですが、突然親会社からの発注が停止するということが起きた場合、同時に自分の工場のラインも止まるかどうかを見るのです。

既に立てていた計画があるからといってラインが動き続けていたら、それは「つくり過ぎのムダ」があるということです。すぐにラインを止めて、「つくり過ぎのムダ」を瞬時に「手待ちのムダ」に変換させます。そして、突然手が空いてしまった人達にこれまで後回しになっていたカイゼンの実行をしてもらいましょう。現場には「手待ちにしておくわけにはいかない!」という気持ちがあり何かを作ってしまいがちなのですが、間違いです。売れないモノを余分に作ると場所がなくなり、運搬が発生し、管理が複雑になりカイゼンの時間が益々なくなります。生産を止めればそれらのムダは起きず、カイゼンの時間が生まれます。

そして「つくり過ぎのムダ」があれば必ず「在庫のムダ」があります。この機会を使って改めて倉庫や工程内にあるモノを細かく見てみましょう。何となく景色に溶け込んでいたけれどよく見るといつの間にか不要なモノがたくさんたまっていることが多いのです。在庫を整理して場所を空けて、これから始まる新たな仕事のスペースを今のうちに確保しましょう。

そしてもう一つの基本カイゼンの実行ですが、あまりに当たり前すぎて逆におろそかになっている可能性のある「動作のムダ」をテーマにするのはいかがでしょうか。「動作経済の4原則(距離を短く、両手を同時に使う、動作の数を減らす、楽にする)」に基づいて全員が自分の作業動作のカイゼンをするといった超ベーシックなことをするのです。先日私の指導先のカイゼン会で全作業者が自分の動作の見直しを行いました。ひとりの女性作業者の部品はすべて近くに置いてあり、特に問題はないと私は思っておりました。ところが彼女はより楽にしたいということで、位置はそのままで高さを3㎝程高くするというカイゼンを行いました。驚いたことに彼女の一日の生産量はこのカイゼン後10%アップしました。これは実際に作業している人でしかできないカイゼンです。私ではそこまで気が付くことはできませんでした。このようなことを全員で行い、発表会でその内容を共有化したのですが、とても盛り上がりました。

この会社では時間を取ってすべての人の参加でカイゼンを行いました。皆さんがよりクリエイティブになり見える形で仕事が変化することで心配が減り、元気になってきたとのことです。忙しいときにはできなかったことをこの時期に行ったいい事例です。

いかがでしょうか。この例に限らずいろいろなアイデアがあると思います。みんなで考えて実行してピンチをチャンスに変えていきましょう。もしお困りのことがおありでしたら、日本カイゼンプロジェクト事務局にご連絡ください。ご一緒に考えるお手伝いをいたします。


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫