8月のご挨拶

 オリンピックが始まりました。直前まで新型コロナウィルス感染拡大が止まらない状況で開催できるのか?という議論があり心配しましたが、開会式は無事終了し、競技も予定通りに行われています。会場には行けないものの、多くの人がアスリート達の真剣な闘いに心からの応援をしています。最後まで問題なくすべての競技が行われることを願います。

7月25日の午前中、私はロードの自転車競技が始まる3時間前にコースである道路を車で通りがかりました。そこでは道を閉鎖するための3角コーンがきちんと整頓された状態で置かれるなど準備がしっかりとされていて、もうすぐ作業が始まって直後に競技者が猛スピードで通り過ぎていくのだろうなあ…と想像できました。道路状況は場所によって様々なのに、コース全長が200㎞を超えるのですから、よほどしっかりしたマニュアルが用意されているのだと思います。そしてそのような周到な準備が連日すべての会場で同時に行われていると考えると、このオリンピックは素晴らしい管理がされているなぁ…と思いました。マニュアルでの運営は欧米が得意で、日本は苦手…といった評価をよく聞いていましたが、オリンピックを見る限りそんなことはないように思います。

しかしこのような準備も大変ですが、もっと大変なのは競技が始まってからの統制ではないでしょうか。私が見た過去のオリンピックのロードでのゲームでは、突然観客が飛び出して選手に抱きついたり、コースを車が横切ったりというアクシデントがありました。そしてそれを防ぐ警備の人たちは大げさな武器を持って威嚇するといった物々しい風景の記憶があります。観客の一人ひとりをマニュアルで指導することはできませんので、武器で脅して違反行為をさせないという管理にならざるを得ないのでしょう。

ところが日本ではそのようなことをしなくても安全に競技が運営されます。だれもマニュアルで指導を受けたわけではないのに、それぞれが周りに気を遣いながらオリンピックの運営成功に向けて自分なりの方法で協力するという日本人の国民性から生まれる動きだと思います。そしてこの素晴らしい動きは日本の製造業のカイゼンと相通じています。日本の現場ではそれぞれの担当者が、特に誰の指示を受けるのでなく、自分の判断でやりにくい仕事をやり易くしたり、仕事量が多くて締め切りに間に合わない時に間に合うように工夫したりしています。

欧米の仕事のやり方はトップダウンで、マニュアル通りにやることが前提で、そこに記載がない余計なことはしてはいけないというのが基本です。そうだとしたら、カイゼンは記載がないことですから、やってはいけないことになります。

一方、日本ではカイゼンは会社に必要なことと認めれられていますから、意欲のある人たちが集まった職場ではカイゼンが大いに機能し経営を支えています。カイゼンは世界でも稀な日本独特の経営手段です。

しかしその実力がしっかり経営に活用されているかというと必ずしもそうと言い切れない企業も多く見かけます。上司がキチンと実行されたカイゼンを見て実行者をほめてあげることができているかどうかが活用できるかどうかの一番のポイントです。そしてそのすごさをその部分で終わらせず、更に広く深く全社に行きわたらせる全体最適のレベルに昇格させることです。

オリンピックの話から始まってカイゼンに至る議論もいいと思います。どうぞこの機会を通じてカイゼン力の増強を図って、アフターコロナの経営を強化してください。




【お詫びとお知らせ】


日本カイゼンプロジェクト会報は9月に発行予定で準備をしておりましたが、長引く緊急事態宣言やオリンピックの開催に伴い、予定をしていたイベントなどができておりません。そこで大変に申し訳ありませんが、発行を遅らせて戴きたく存じます。詳細は別途ご連絡させて戴きます。まことに申し訳ありません。


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫