前回は、プロジェクトは始めることはかんたんでも終わらせることは難しいことについて述べました。最悪の場合は、実行中のプロジェクトがどんどん増えていく例なども紹介しました。プロジェクトをどのように終わらせるかについて、事前に成功基準という指標を最終成果物に設定しておくことがカギになると説明しました。
今回は、プロジェクトの成果物をより円滑に組織に溶け込ませる工夫について述べることにします。
前回、成功基準というプロジェクトマネジメントの用語を説明しました。まず、これについて説明を追加しておきます。
【1】目的と成功基準で目指すべき成果物が決まる
前回、事例として建屋内に3本ある既設組立ラインを短縮化して4本に増設するプロジェクトをとり上げました。最終成果物は4本の組立ラインです。これに成功基準として稼働率70%を設定しました。70%は、既設ラインの現状なみのレベルでした。短縮化の機会に稼働率の向上を狙うとすると、稼働率75%を設定することもできます。この場合、プロジェクトはより難しくなります。つまり、プロジェクトはただ終われば良いということではなく、出来映えのレベルを指定することができます。整理すると、次のようになります。参考までに東京オリンピックの素晴らしかった事例のひとつについても追記しました。
プロジェクトの完了(終了)を何で判断するか、それをより明瞭にするものが成功基準と言えます。プロジェクト立ち上げ時に設定すれば、そのプロジェクトで何をめざすのかがより明確になるということでもあります。本連載の初回(その1)で、最初がとても大事ですとお伝えしました。成功基準は、その大事なもののひとつになります。
【2】そもそも社内プロジェクトとは
社内プロジェクトで一時的に組織の機能を応援することがあります。例えば、毎年実施する新入社員研修、会社創立記念日のイベント、地域社会の祭事などの応援、これらは担当部署だけではカバーできないということがあります。こういう場合には、期間限定のプロジェクトチームが定常的な組織のように機能することになります。
また、新しい組織や制度をつくる場合など、担当するための適切な部署が社内に無い、そういうときに社内プロジェクトを立ち上げることになります。これは長期間を要することもあります。プロジェクトは終了しても、引き続き検討すべき課題が残ることもあります。
さらには、前回と今回とり上げた組立ライン増設プロジェクトのような場合はプロジェクトが終了したらチームから担当部署へ移管することになります。つまり、社内プロジェクトは終わったとしても、担当部署のもとで必要な機能を発揮するよう維持管理が必要になります。
【3】社内の会議体に引き継ぐ
前項で述べたようにプロジェクトは終了したとしても、引き続き検討すべき課題が残ったり、維持管理が必要になったりします。社内プロジェクトの場合、全てのメンバーは本来業務と兼務していますから、なるべく早期にプロジェクトを終わらせたいという前提条件があります。そのため、プロジェクトでやり残したこと、残務が発生します。また、プロジェクトが期待した機能や役割を果たしているか、つまり、円滑に組織に溶け込んでいるかを点検する必要もあります。このような役割を果たすために、関係者による会議体を設置します。毎月一回程度開催し必要な対応を協議します(対象となるのは、実行中または終了したプロジェクトです)。もちろん、点検の必要が無くなったプロジェクトは何も協議する必要はありません。以上、会議体の設置については、筆者がお付き合いしている企業での実施例に基づきながら紹介しました。ここではプロジェクト委員会という会議名称になっています。