新・虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第23回

北ドイツと南ドイツの違い

● 北ドイツはやや革新的、南ドイツは完全に保守的です
 日本でも東日本や西日本、関東や関西という言い方をしますように、北ドイツと南ドイツも同じように区分されています。ドイツは以前には西と東に分かれていたことがありますが、統一する前から北と南はお互いが、人種が違うとか馬鹿にした様な言い方や差別を平気でしています。
 同じ会社でも、北から南へ転勤になったマネージャーの言うことは聞かないことが当たり前にあります。逆も同じですが、なぜ同じ国民なのに住んでいる土地が違うとこのような偏見を持つのでしょうか。
 北ドイツの男性と南ドイツの女性が結婚したら、上手くやっていけるのかと心配するくらい北と南の考え方が合わないそうです。好きになればいいじゃないかと思うのですが、育った環境が違うとなかなかすんなりと相手を認めることができないようです。
 通訳に聞いてみると、北と南では方言があり、話をした瞬間に北出身か南出身かがわかるそうです。日本でも、東北地方の人と九州地方の人たちの方言はすぐわかります。相手のことを少し思いやる気もちを持つだけでも、近隣の交流も人の付き合いもスムースになると思うのですが。
 一般的に性格の違いとして、北ドイツの人達はやや革新的で新しいものにも挑戦してくれます。南ドイツの人達は、古いものを大切にして、伝統もとても大切にする完全な保守型です。新しいことにはすんなりとはいきません。従って根気よくユーモアを交えながら、少しずつ解きほぐしていく必要があります。
 保守的なことが良いのは、カーニバルやフェスティバルの時には嬉しいものです。今でもお祭りになると伝統的な衣装を着て練り歩きますし、レストランでもその衣装で対応してくれます。男性は、半ズボンで鳥の綺麗な羽根のついた帽子を被ります。女性は、胸の部分をオープンにした白いブラウスにスカートをまといます。有名なオクトバーフェスティバルでのビール祭りでも見られます。
 北と南の人たちを混ぜて、ワークショップに2から3日間に同じテーマに参加してもらうと仲良しになります。ワークショップとは、一緒になって同じテーマを終日にわたってカイゼンを実践するやり方です。
 お互いが知らないために、警戒をしているからだと思います。一緒に仕事をしたり食事をしたりすることで、仲良しになるのと同じです。これは同じ工場の間接部門と製造部門との関係も同じです。相互理解しようとする機会見恵まれていなかったために、疑心暗鬼になってしまったと考えられます。筆者のワークショップのやり方は、積極的に工場内の人たちをシャッフルしてワークショップに参加してもらいます。

● 北ドイツは貧しく、南ドイツは裕福という違いもあります
 関西の人はうどんですが、関東はそばです。上野の立ち食いソバやで観察していましたら、うどんを食べる人は1割もいませんでした。しかも味は関西では薄味で昆布が基本ですが、関東は濃い味で鰹節がベースです。新幹線では2時間半の距離ですが、文化の違いや考え方の違いは南極と北極の違いのようです。
 一般的に見て北ドイツは貧しく、南ドイツは裕福です。特にミュンヘンとシュツットガルトにある有名な自動車産業があります。それらにまつわる自動車部品、工作機械の各メーカーがたくさんあります。特にシュツットガルトの近郊は、昔から土地が狭く長男だけが跡継ぎができ、次男や三男は何かをしなければ食べていけなかったそうです。
 そして生きていくために、手に職をつけ技術を磨いていかなければ生きていけない歴史があります。彼らには、頑固なうえに勤勉さもあります。特にシュツットガルトの周囲には、とても多くの企業があり私もその恩恵を受けています。
 北ドイツにはこのような大きく有名な企業はあまりありませんが、ブレーメンに飛行機関係の会社があります。もともと大戦時にはドイツの戦闘機を生産していた地方です。トヨタで使っている用語の「タクトタイム」は、メッサーシュミット戦闘機を生産する時に使われていた用語です。
 ベンツ社が最も高い製造業の賃金チャージと言われていますが、実は飛行機の方がもっと高額です。このように付加価値のある仕事が日本にもあれば、社員の年収も上がり余裕のある生活ができるのではないかと思います。

● 裕福さの違いは、昼食のロールパンに表れます
 ドイツ全国を回りますが、北と南の違いは朝一に出てくる塩パンがあるかとないかです。当然出てくるのは南ドイツの方です。8時から講義を行い9時前後に終わることには、コーヒーやコーラ、炭酸水とともに塩パンが提供されます。これは早朝の出勤者は、5時半からの勤務なのでちょうど朝飯になるものです。それにワークショップ参加者もご馳走になります。
 この塩パンは、前ブッシュ大統領がのどに詰まらせたことで有名になったプレッツェルの手のひらサイズのパンです。南ドイツではどの工場でも出てきますが、北の工場では一切出てきません。ケチでしょうか?習慣がないだけです。
 また昼食には社員食堂が滅多になく、その代わりにロールパンというドイツ独特のパンが出てきます。これは丸いパンを半分に切り、その上にハムやチーズを載せてそれらが落ちないように親指と中指でパンを支え、人差し指で具を押さえながら食べます。
 その具は北と南では全く違い、北はごくシンプルにハムかチーズが1枚しかありません。しかし南は、ハムが2枚、3枚とかトッピングも色々と豪華になります。パンの種類も何種類もあり、選ぶのに苦労するほどです。しかもとても美味しいのです。パンの外は固くしっかり噛むことになり、2つでお腹一杯になります。