● 日本以上に中小企業の力が強く、経営数値も良い
ドイツの中小企業の占める割合は、99.6%ともいわれるほど中小企業が多く存在します。ドイツの企業は、株式会社はとても少なくほとんどが有限会社です。株主からトヤカク言われなくとも、自分のことは自分でやるという考えのようです。しかも輸出の割合がとても高く、EUが陸続きというメリットもあり日本の数倍以上もあります。
またドイツの中小企業でも世界一、欧州一というブランドやシェアをもっている「隠れたチャンピオン」という企業数が、世界で2000社余りの内1300社以上もあります。特に自動車関連や機械加工関連での領域で、強い技術力や性能をもっています。
実際にコンサルを依頼される時には、必ず経営トップにインタビューします。改善の目的として、この土地からでなくてもよいようにしたいという郷土愛に溢れているオーナーが実に多いのです。ハンガリー、ポーランド、チェコなど旧共産圏まで進出する大手企業もありますが、中小企業のほとんどは自分の土地を離れようとはしません。本物の改善をしたいから、日本人のコンサルタントを呼ぶのだといわれます。
また社員も家族と別れての出張や単身赴任をとても嫌います。経営トップや上昇志向のマネージャーは、給料が格段に良いのでそれを受入れます。でも週末には必ず家族のもとに帰宅します。その辺は大変律儀です。ただし、クロアチアだけは例外で、半分は離婚して現地の女性と一緒になってしまうというのです。クロアチアに行きましたが、理由はすぐにわかりました。美人がとても多いのです。
日本の製造業の経常利益率は、一般的に3から10%です。10%もあれば優秀な企業ともいわれます。中小企業は平均3~5%以下です。でもドイツの企業の数値は数%から40%もあり、訪問している企業もこの経営数値を確保しています。ちなみに赤字の企業は存在しません。日本は約6割が赤字のまま経営が続いているそうです。この辺の甘さが問題かと思います。
訪問した時に社長が、最近経常利益率が大幅に落ち込んだと頭を抱えていました。いくらからダウンしたかと尋ねたら、40%から35%になったというのです。日本と桁が違うことを知らされました。この辺も危機意識の差が出ているかと思います。
日本の製造業のトップであるトヨタは、経常利益率が約10%であり、仕入先からの購入金額は7割に及んでいるようです。しかしドイツでは、中小企業であってもコア部品は自社製造していることが多くあり、製品を直接顧客に提供しています。だから付加価値が高く、独自のノウハウをもっている強みがあると考えます。
日本のように親会社の下請け的な状況では、多くの利益を確保できません。しかし彼らは直接顧客に製品を販売することで、多くの利益を生み出しています。ドイツでは、赤字が3年続くと法律で倒産させられます。日本は、赤字でもなんだかんだで生き伸ばしていますが、甘えになってしまうと考えますが、いかがですか?
● 技術力と開発力を徹底的に磨いている
ドイツの中小企業が独自の技術力をもっているのは、彼らの気質によるものと考えます。それは、土地の貧しさゆえに工夫をせざるを得なかったこと、その地方の企業同士が協力し合って製品や技術などの連帯関係を築いていたなどの理由です。
世界地図を見ますと、ドイツの国境を接ししている国が10カ国もあります。しかも近年は共産圏からの多くの独立国家が誕生し、地図が様変わりしています。日本とは大違いです。彼らは、昔からの領土の奪い合いや闘争による論理的な議論や武器の製造、さらに戦略を立てるなどを日常的にしています。
また敵から守るための保守的な考えゆえに、ものを大切にするとか、付加価値をつける、というプロセスからも開発力や技術力が養われたと想像します。
意外かもしれませんが、彼らは手先が日本人のようにあまり起用ではありません。それゆえに、工具づくり、道具づくりといった機械仕掛けが得意です。しかも頑丈で、壊れないものをつくるのが大好きです。
ただ、簡単なものを複雑にし過ぎることや考えることに夢中になり、なかなか実践できないという反面もあります。ですからワークショップの時は、「100満点でなくとも60点なら実施しなさい」と口うるさくけしかけていました。
● 田舎でも優秀な企業が多くあり、考え抜く力が強み
大きなドイツの地図に、訪問した土地に赤筆で印をつけています。地図に載っていない訪問先も多くあります。地図には、2万人以下の町は掲載されていないようです。でも訪問する企業の半分程度は、地図に載らない田舎にあります。田舎といっても国際的に勝負のできる企業は、先に述べたようにたくさん存在します。
それも田舎といわれる場所に存在していますので、コンサル時の移動が大変です。仕事が終わってから次の訪問先まで、数時間から8時間も移動することも多くあります。
今時電信柱やテレビのアンテナが立っているのは、ドイツの人口比でわずか数%以下の田舎の地域といわれます。でも訪問する工場の大半は、その電信柱がまだ残っている田舎なのです。大きな地図にも、掲載されていない田舎にも立派な企業があるのがドイツです。電信柱やアンテナは、通常地下に埋設されていますので景観も良いのです。
また彼らのもっている優れた力は「考える力」だけでなく、「考え抜く力」をもっている点です。これは国民性でしょう。さらに技術、開発、経営、教育を伝えている「マイスター制度」も起因していると考えます。この制度は、昔から存在してドイツの優秀な技術力や開発力企業の根底になっていると考えます。このマイスター制度については、別の機会に紹介をしたいと思います。