虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第36回:なぜそよ風は涼しく感じるのでしょうか?(その1)

そよ風と扇風機の風の違いは、ゆらぎにありました

 学生時代に夢中にやっていた軟式庭球の合宿中のことです。炎天下の束の間の休憩の時に木陰に入ってそよ風に当たると、なんとも涼しく爽快感も凄く感じました。しばらくは風にあたっていると、風の強弱だけではなく、時にはまったく風のない時もあり、しばらくするとまた風が吹いてきます。それには、なんとなく規則性があるようでない不思議な感じを持ったものです。すると先輩から「いつまでサボっているのか!早く練習せんか!」と怒鳴る声で、我に返りすぐにコートに戻ったものです。
 夏の風呂上りの時に汗を吹き飛ばしために、扇風機で1分も当たっていると気化熱で涼しくなりますが、木陰のそよ風の爽快感とは違ったものを感じます。自然の風と人工的に作った風の違いに不思議さを感じるようになり、その理由を自分なりになぜなぜを繰り返していました。
 社会人になり電気機器製造会社に入社してから、数多くの特許や実用新案を出す機会に恵まれ、この爽やかな風を起こす扇風機が作れないかと考えた時期がありました。その爽やかさを感じるには規則性とそうでない、つまり予測できない不規則性のタイミングの組合せがありそうだと考えていました。それをタイマーと組合せて風の強弱をつけてやれば、木陰でのそよ風が人工的に作れるのではないかと目論んでいました。
 ところが1980年代に、1/f(えふぶんのいち:ゆらぎの程度が周波数<f>にほぼ反比例する分布をしている)ゆらぎの風を発生させる扇風機が発売され、そよ風の正体が「ゆらぎ」ということを知りました。世の中同じことを考える人がいるものだと思いながらも、この特許を取っていたら儲かっただろうなと悔しい思いをしたものです。

図1. ゆらぎのあるそよ風は心地よさを感じます
図2. 自然の中でリラックスして散歩しましょう