虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第35回:改善案を簡単に出す第三の眼を紹介します(その1)

困っている事実を、具体的に言葉にして書き出します

 多くの人から改善提案が出てこないので、相談に乗って欲しいと依頼を受けます。改善提案やアイデアを出すには、手順というかセオリーがあると考えます。大切なことは、困っている事実を知ることです。原因や真因はその時点ではわかりませんが、まず事実を知ることが前提になります。
 困っている事実を自分だけがわかるのではなく、誰にでもわかるようにすることが重要です。そのためには、まず言葉に置き換えてみる作業をすることです(言語化)。お互いに話をしても良いのですが、その言葉を書き留めることが大事になります。最初は羅列でも結構ですので、書き出す作業をしていきます。不平や不満といった類いは、まず横に置いておきましょう。その話から始めますと段々話が暗くなってしまい、姿勢も思考も落ち込むようになるからです。
 そして、ある程度困っている事実が出てきたら、その作業や工程の目的は何か?と考えてみます。安全性が向上する、作業姿勢が楽になり疲れを防止できる、品質不良や手直しが少なくなる、作業環境が良くなる、ムダが少なくなる、リードタイムが短縮できるなどです。これらが解決するとその先には、原価低減や価値向上があります。
 この時に自分だけなく、同じ作業や工程の仲間と一緒に取組むことで、さらに事実は鮮明になってきます。できるだけ多くの見方をすることです。その方法として、筆者の訪問先では、個人の提案よりそのチームやグループでの取り組みにしてもらっています。一緒に考えて実践して、提案実施の賞金はチームで分配し、チームワークの力をさらに向上させようとしています。仲間の「岡目八目」の眼を借りましょう。
 頭に浮かぶことのエネルギーを1とすれば、言葉にするエネルギーはその10倍も必要になります。さらに言葉を文字に書くというエネルギーは、さらにその10倍も必要になります。つまり、頭で考えていたことを書くことは、100倍のエネルギーが必要になります。それだけの労力を掛けるのですから、頭が汗をかくようになり無意識だった状態が俄然意識する頭に変身するのです。この数値は、筆者の経験値です。
 書くという作業は、非常に頭を整理するのに役立ちます。著者は、いつも胸ポケットにリングの付いたメモ帳を携帯しています。さらにB5判のノート、さらにはコピー用紙の裏紙、広告の裏紙(これは表面がツルツルしているので、サインペンでスラスラと書け、イラストの素案を描く時に重宝します)を置いています。

図1. 考えていることを言葉や文字に書いてみましょう
図2. 自分を他の視線で考えてみる