虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第31回:視界を広げるために、海外に飛び出してみましょう(その2)

見たり聞いたり試したりが実際に体験できます

 欧州は車も右側通行で、しかも左ハンドルと日本の全く逆です。話す言葉も日本語でなくそれこそ外国語であり、日本語を話す人は誰もいません。わからないことがあれば同僚などに聞けば済むことが、海外に行くとすべて自分で解決しなければならないこともその時にわかったことでした。頭で理解することと、体験は随分違うものです。
 見るもの、聞くもの、食べるものなどあらゆることが、違うことで多くの気づきがあります。海外に出ることで、今まで見えなかった日本のことが次第に見えるようになります。例えば、日本、イギリス、オーストラリアなどの島国では、車は左側通行の右ハンドルと関連性が見えてきます。旅行中に使う通貨は、国々によって違います。いつも電卓を持参して、計算しながら土産や食事をすることになります。直に物事に触れることで、文化の違いを鮮明に感じ取る機会を得ることができます。
 欧州で12ヶ国回っていた時は、小銭のコインが面倒であり、さらに換金する度に目減りすることにガックリでした。ユーロに統一されてこの点は非常に便利になりましたが、いつもレートを気にするようになりました。ドイツからの振込がユーロ建てなので、振込時期が違づくと一層気になります。これらにまったく関心のなかった家内が、レートや株価の変動の推移を毎日見るようになりました。
 海外に出掛けて食事や買い物、宿泊や移動にはやはり相手に訊ねる、確認することが必要になりますが、人と人の出会える楽しみが待っています。言葉で難儀しますが、意思を伝えるために知っている単語を並べて、大袈裟なジェスチャーをする、絵を描くなど、ありとあらゆる手段や五感を一気に発揮させることになります。気持ちが通じた時は嬉しくなってしまいますが、自分の持っている潜在能力に自分自身で感心することもあります。一度体験するとまたやってみたくなるもので、好奇心も湧いてきます。
 経験談ですが、旅の心得としては「郷に入れば郷に従う」ことだと思います。相手に合わせる気持ちが、少しずつ言いたいことが伝わるようになります。その土地にしかないものがあり、そこしか味わうことができないものもあり、それに出会い素直に受け入れることです。そうすると日本や自分の周りのことも、よく見えるようになってきます。比較するものができると、文化や習慣の違いも受け入れやすくなります。
 ドイツのビールの美味さは、ドイツの気候や食べ物に合うものが昔から造られてきました。それを日本に持ち帰って飲んでも、あまり美味しいと感じません。逆に日本のビールは、日本で飲むと美味しいと感じます。ドイツ人を連れて日本でビールを飲んでもらうと日本のビールは美味しいと言いますが、味は風土により変わるものだと思いました。


多様性を意識することで気づきも多くなります

 毎月のように海外に出掛けていますと、多くの気づきが得られます。さらにこの気づきを「海外こぼれ話」と称して、地元の機関紙に連載をして190話になりました。毎月掲載(原稿用紙で18枚分)しますので、色々なことに好奇心を持たないことには原稿も埋まりませんが、幸いに書くネタ(特に失敗談)は豊富にあります。
 毎日日記やメモを取る習慣にして、原稿のネタを探しています。デジカメも使っていますが、スマホはさらに記録する点で便利です。身近なツールも活用次第です。SNSで毎日発信することも簡単になりました。発信するからには、少しでも読者の皆さんに「なるほど」と思ってもらえる気持ちを持てば、内容もさらに良くなると思います。
 自分の立ち位置を変えることで、視点が変わってきます。相手の立場にも立つことでも視点は変わります。相手も時間も空間も変化しているのであり、その多様性を素直に受け入れるようにすれば、多くのことを知ったり活用したりすることができます。受け入れて試すことで、また新しい気づきや発見が得られるものです。