虫の眼・魚の眼・鳥の眼 第26回:心にどんな鏡を持っていますか?(その2)

心の中に望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡、何がありますか?

 望遠鏡は遠いところを見たいという要求から作られ、顕微鏡は小さいものを見たいという要求から作れました。双眼鏡は、望遠鏡の仲間です。劇場、スポーツ観戦、自然や動物観察など、遠くを見る手段に使われます。倍率という言葉が使われますが、3倍から数倍です。3倍というのは、30m先のものが10m先に見えるように拡大されることを言います。双眼鏡というくらいですから、両眼にあてて見ます。
 望遠鏡は単眼で見ますが、映像が上下反対になって見えます。双眼鏡はそれでは使いづらいので、プリズムを通して反転させます。顕微鏡も両眼で、双眼鏡のようにプリズムを通して上下を逆にして見ています。
 さて心の中の鏡は何がありますか?遠く未来を見たいとか夢を見たいという望遠鏡をお持ちでしょうか?言い方を変えると、あるべき姿を見ることができます。またあるべき姿から、逆方向に現実を見る望遠鏡の両方の見方が必要です。こうすることで、あるべき姿と現実とのギャップが見えるようになり、問題として捉えられます。
 ギャップを問題として捉えたら、それを具体的に課題として見るために両眼で見る双眼鏡が必要になります。しかも確実に焦点を当てないと、ピントに合いません。間違ったことを見てしまうと、大きなロスやムダになってしまいます。
 双眼鏡は、結婚前のお見合いのようにしっかり眼を開けて、対象物を観察せよというものです。また対象物は1つだけではありません。原因が複雑になってきているので、その周囲も観察しておく必要があります。魚の眼で周囲の流れやトレンドも観察しましょう。街中や駅などの広告や掲示物、人のファッションや持ち物など関心を色々と持つことで、お互いの関連が糸のようにつながってきます。
 そして実際に焦点を当てたところには、さらに拡大して原因さらに真因を見ることができる顕微鏡が必要になります。拡大することにより見えなかったものが良く見えるようになります。倍率を大きくすると、少し動かしただけでもまったく違ったものを見てしまうことになるので注意が必要です。つまり拡大する時は、神経を集中させることが大事になります。カメラのファインダーをのぞく時には、いつも息を止めますが、皆さんはいかがですか?これでブレなくなるのです。

あなたの鑑は、綺麗に磨かれていますか?

 鏡つまり鑑とは、人間の模範、規範を意味します。コンサルとして工場や職場に出向いた時には、まず床の状態を観察します。生産活動や5S活動の結果が、床に表れると考えています。その維持管理をしているのが、オペレータはもちろんですが、実は、そこにいる上司の普段からの行動や考え方の結果となって表れるのです。
 床が綺麗であれば、清掃がしっかり行われていつも清潔になっていることがわかります。ゴミ、汚れ、ホコリが散乱していたり、ラインがずれていたり、剥がれていたり、ラインをまたいでものが置かれたりすると上司の規律の乱れをすぐに察知できます。
 会社は社長で、工場は工場長で、職場は職長というように、その人の人間力で決まると考えます。いつも自分の鏡を磨くごとく、心の鑑を磨いておきたいものです。