厨房の現場で作業をして虫の眼で見ていくと、とても良い気づきを得ました。今まで捨てていた野菜クズが、ある時からお宝になったのです。今まで捨てていた生ごみと称する野菜クズが、とても多いことに気づいたのです。人参やジャガイモの皮をピラーで取るとそのクズになる重量は、約10%になります。ヘタや根っこの先まで捨てればクズが、15%にもなることがあります。玉ネギ、ネギ、蓮根、キャベツなどもほぼ同じ割合でした。今までこれを生ごみと称して捨てていたのです。ああもったいない!
実は、この野菜の捨てていた皮、ヘタ、種子やワタ、根には最も野菜として成長するエネルギーがある貴重な部位なのです。玉ネギの皮や根、ピーマンのヘタや種、ニンニクや生姜の皮、ネギの根、これらをファインケミカルと称するそうですが、知らない時はすべて捨てていたのです。知らないことは恐ろしいことです。しかも栄養素の最もある部位を捨てていたのです。
その部位を取っておいて両手一杯になったら、その材料を鍋に入れて臭い消しのために少量の酒を入れて、水1リットルを入れて弱火で20から30分煮込みます。冷めてからこしたら完成です。約700㏄抽出でき、和洋中の何でも合う出汁が完成します。飲んでみると優しい味の黄金色の出汁になっています。具材が足らない時は、昆布、干しエビ、リンゴの芯、煮干しなども加えればよいでしょう。お宝に変身させることができます。
冷蔵庫に保管して1週間、冷凍すれば長期の保管が可能です。無料のしかも栄養素たっぷりの出汁の完成です。料理の現場に入ったからこそ気づいたのです。この出汁を飲んでみると、美味しくしかも優しい味に感動しました。視点を変えることで、評価されなかったものが実は価値ある存在だったことが見えて来たのです。捨てられていた材料も最後に出汁になれば、本望だと思います。「野菜クズ様、いやファインケミカル様、最後までお役目ご苦労様」と言いたくなり、思わず両手を合わせてしまいました。
男子厨房に入らずなんて言われていますが、あえて自分の立場や環境を変えることが視点を変えて相手の身になって考える良い機会だと考えます。人は同じ環境にいると自分のことしか考えなくなり、さらに自分の都合しか考えなくなってくるものです。
食べる立場から今度は作る側の立場になると、今までと違った次元での考えや行動が必要なります。実際にやってみますと特に作り手の立場の苦労が、身に染みて分かってきます。何気なしに作り手に、美味しい不味いといっていたことの愚かさに気づかされます。そういう意味でも相手の立場になれる環境の変化をあえて行うことは、非常に意味のあることです。そして思いやりもお互いに生まれてくるはずです。立場を変えて相手のことが分かってくると、感謝の気持ちが湧きてきます。時には買い物や後片付けは、率先してやりたいものです。生産現場も同じことですね。