からくりカイゼン 第9回

からくりカイゼンの10個の原理原則:滑車

 からくりの2番目の原理は、滑車の原理です。テコに次いで多く使われるからくりの原理です。今まで多くのからくりカイゼンを見てきましたが、テコと滑車で約8割のからくりができていると思います。ある電気機器会社は、この2つの原理だけに絞って徹底的にからくりカイゼンをして、簡単だけど誰でも挑戦できる工夫をされています。

 滑車は、簡単言えば小さな力で重いものを持ち上げる機構です。滑車には2つの性質があります。1つは滑車が動かない定滑車と逆に滑車が動く動滑車です。定滑車と動滑車をそれぞれ単独で使ったり、また一緒に組み合わたりしてからくりカイゼンをされています。

 実際に滑車は見えませんが、エレベーターが定滑車と動滑車と組合せて、数百㎏さらには数トンの重いカゴをスムーズに移動させています。世界最速のエレベーターは、何と1000m/分です。

 定滑車は、井戸のつるべ(水を汲み上げるオケ)の原理です。つるべを深い井戸に漬け込んで水を汲み上げます。この時滑車は固定したままで、ヒモを引っ張ることで重い水の入ったつるべを持ち上げます。定滑車の原理は、ヒモを介して動きを変えることです。重さも持ち上げる=引っ張る距離(長さ)も変わりません。ただ重いつるべを手だけではなく体重をかけて引っ張るので、持ち上がることができます。

 動滑車は、ヒモの一方を固定してその間にぶら下げます。もう一方のヒモを動かします。ぶら下がった滑車が動くので動滑車と呼ばれます。一方が固定されているので、力は半分になります。しかしヒモを引っ張る距離は2倍になります。動滑車の利点は、重いものを半分の力に変えることです。2つすれば、1/4の力で済みます。小さな力で重いものを運ぶことができます。

 からくりカイゼンをやっている工場に行ったときに、100㎏もある重い馬台(ジャッキスタンド)を移動させるために、台車に6つの動滑車を組み合わせ、わずか6㎏の力で持ち上がるからくり台車を作っておられました。しかも荷重は足踏みなので、軽く踏むだけで持ち上がります。

 最近のからくりカイゼンでは、この動滑車を巧み使いこなす現場が増えてきました。設備を解体して余っていたシリンダーを使って、その作動ストロークが20㎝でも動滑車を何個も使って、10倍のストロークを稼いで重たい金属ドアをスムーズに開閉させていました。

(次回に続きます)