からくりカイゼン 第20回

からくりカイゼンの10個の原理原則:追加分は傾斜の利用

 からくりの原理を細かく見ていくと、20も30もあると言われます。その中で追加して紹介したいのが、傾斜に利用です。

 NHKのEテレで、ビー玉を使って色々な動きを見せてくれる「ピタゴラスイッチ」と言う幼児向けの番組があります。毎日10分間のうち最初と最後の2回にわたり、色々なピタゴラ装置が紹介されます。

 ビー玉の位置エネルギーを利用し、傾斜、てこ、磁石なども使って面白い動きを出してくれます。4~6歳向けとありますが、からくりの良いヒントが満載で20年間観ています。見方を変えるとからくりのマニアの番組と言えます。

 重いものを持ち上げるのに傾斜を利用して積み上げたものが、有名なピラミッドです。何十トンの重い石を持ち上げるには、当時は滑車では耐えられない重さでした。緩い傾斜である坂道を作り、コロに載せて摩擦抵抗を小さくして引っ張って積み上げたと想像できます。

 傾斜を利用してモノを運んだり移動させたりする時に、さらに効率をよくするためにコロを併用すると、摩擦抵抗を大きく減らすことができ、楽に作業ができるようになります。モノにもよりますが、1桁から3桁まで少なくできるので、材料選定や表面の条件は大切になってきます。

 ピラミッドの時代に、既に潤滑油を使っている形跡が象形文字の中から見つかったそうです。少しでも抵抗を減らす工夫があったのです。困ることがあると、人間は知恵を使うのは昔も今も変わらないようです。

 コロを使うコロコンやコンベアも多種多様です。摩擦抵抗を減らすことなので、軸受けをつける方法、レーンの滑りをよくするために樹脂製の“敷居滑り”を貼る方法、軽いものの時はブラ段など色々あるます。

 移動させたいワークの自重を利用しながら、傾斜の角度を変えることで移動の速度を変えることができます。またてこの原理を使って、移動の方向を変えることもできます。パチンコ台は、板ではなく釘を使って球の方向を変えています。上手くいけばチューリップの穴、ダメなら最下段の奈落の底に収納されます。

 からくりカイゼンでぜひ実践して欲しいのは、加工組立して良品判定をしたら、自働ハネ出しの機構をつくることです。ハネ出したワークを次の工程まで移動させることで、取出しと移動のムダが削減できます。ハネ出しはできるだけ次の工程のワークをセットする近くまで寄せることで、さらに楽に作業が可能になります。