からくりカイゼン 第13回

からくりカイゼンの10個の原理原則:動きの方向を変える機構 その3

 からくりカイゼンの4つ目の原理原則は、動きの方向を変える機構です。前回はリンク機構を紹介しました。➌番目は、小さな回転力で大きな力を生むネジです。ネジを回転させることで前後の直線運動に変えることができます。モノの締結だけでなく、移動させる、細かく動かすという使い方もあります。

 ネジの応用実例として、車のジャッキ(いわば廃品)を使って作業台を上下させていたのを見て感心したことがあります。ジャッキは車に必ずついていますが、使うのは冬用タイヤの交換時だけで年に2回ほどです。後はパンクした時に使うだけで普段は使いません。

 このジャッキ付作業台を用いて適正な作業高さを調整すれば、だれでも姿勢の良い作業ができます。多くの職場では作業台の高さが固定されており、オペレータの作業姿勢が適正にならないと、結局疲れてしまい作業ミスや生産性低下になって行きます。

 車に1個はついていますので、廃車業者に頼めばタダ同然です。ジャッキは、700㎏以上も持ち上げることができますので、簡易的な手動プレス機にも応用できます。工場内で色々と応用する価値はあります。作業台を固定する面積が小さいので、シッカリ固定することが大切です。

 ジャッキのネジは、左右が別々の右ネジと左ネジが切ってあります。ですからクランク状のハンドルを回すことで中央部を上下させることができます。同じ方向にネジが切ってあると回りません。ジャッキを素早く上下させるには、ハンドルを大きくしたり、ソケットを溶接して電動ドリルで回したり、方法はいくらでも考えることができます。

 草刈り機の刃を固定する円盤の固定ネジは、刃が右回転するのでネジは左ネジに切ってあります。刃の交換時にちょっと考えないと、さらに締付けることなります。扇風機のハネを固定するネジも左ネジです。同じ方向だと回転している間にネジが緩み事故になってしまいます。

 近年大型トラックの左側のタイヤが外れる事故が多発しています。JIS規格の時は逆ネジだったが、ISO規格に変更されて同じ正ネジ(時計回り)になり、車は左側通行なので左に曲がる時に緩める方向にタイヤが回転するので外れやすくなっていたのです。

 移動させる、細かく動かすことができる代表的なネジは、マイクロメータです。0.01mmの単位で測定していますが、ネジの先端に治具やアタッチメントを固定すれば色々と応用ができます。

(次回に続きます)