ヒューマンエラー対応の職場づくり 第18回

18. 逆のハインリッヒの法則の活用 その1

 ヒューマンエラーは、些細なことの積み重ねの上に発生することがほとんどです。それが些細なことなので、普段はその原因も気づかないことが多くあります。また実際には事故にはならなかったヒヤリハットがあります。

 これは、実際に事故や災害にならなかったりすると、“喉元過ぎれば熱さ忘れる”の諺の如く、いつの間にか「記憶にございません!」となってしまいます。その繰り返しがいつの間にか積もり積もったある時点で、運悪く事故や災害に遭遇してしまうのです。

 この積もり積もったピラミッドの様相が、ハインリッヒの法則です。1929年に米国の保険会社のハインリッヒ氏が発見した法則です。大きな事故が1件あると、その背景には中くらいの事故が29件、さらに小さな事故が300件もあることを突き止めたのです。これは自動車事故だけでなく、労働災害にも同様に適用される比率です。

 人間がやることの法則化できることがわかれば、逆に利用すればよいと考えます。この1:29:300の比率のピラミッドの下を考えて見ます。実際に小さな事故が発生する前に、事故にならなくてよかったというヒヤリハットがあります。

 さらにタイミングがずれてヒヤリハットにはならずに無事に助かったとか、寸前に止めて何事もなかった、ちょっとしたことで免れたことなどと、事故の手前の些細な現象は思いのほかたくさんあるはずです。しかし記憶に残らないのは些細なことや気にも留めることのないことは、小さな事故300件の数倍以上もあると考えられます。筆者は、その領域を「モヤモヤゾーン」と呼んでいます。

 ハインリッヒの法則のピラミッドは、底辺が大きいと頂点の高さが高くなります。富士山が高いのは、すそ野が広いと称されるのと同じです。逆にこの底辺が狭ければ、頂点の高さも低くなると考えます。

 この「モヤモヤゾーン」の現象である、混乱していた、似たようなものがあった、量がたくさんあった、汚れていたのでわからなかった、暗いので見えなかったなどなどです。もうお分かりかと思いますが、5Sと目で見る管理でできる小改善で、廃除できることばかりなのです。

 しかもそれらは、お金もかからずにすぐにできることだったのです。目の前の空気は見えないのと同じことで、気づくと何でもないことだったのです。でも気づくと次々と発見できます。

 この「モヤモヤゾーン」を改善して、分母を小さくしてしまえという作戦です。そうすれば、小さな事故の300件を1/10にすれば、29件だった分子は、0か1になります。そうすれば、頂点にあった分子の「1」は、ゼロになります。

 先日開催された関西物流展に行きました。その時の講演の1つにタクシー会社のGOのロゴのついた講演を聞きました。AIを使ってドライバーさんのクセや習慣までもデータ化して、ドライバーに喚起を促して未然事故防止に役立てているそうです。

 ある運送会社で20数台のトラックを所有しておられますが、未然防止で事故が減り、1年間で約400万円のコストダウンができたと紹介されました。さらにハインリッヒの法則の1:29:300の下のモヤモヤゾーンの気がかり因子であるクセや習慣も入れるとなんと数千から数万が浮かび上がってきたと言うのです。ビックリしました。

 著者は、コンサルタントに成る前からこの数値を意識してヒアリングを繰り返してきましたが、数倍と思っていました。さらに10倍から100倍もあることを分析したのは、AIのお陰と感じました。自分だけの経験値だけでなく、素直にAIも取り入れて気づきの範囲を広げていきたいと思いました。

図1 ハインリッヒの法則の下に「モヤモヤゾーン」があり、それをまず潰すことです