脱力・カイゼントーク 第43回

お金をかけるカイゼン カイゼン実行

日本の製造業は長年にわたり、コスト削減と価格競争を通じて市場の地位を築いて来ました。価格を下げてより多くの販売を目指す薄利多売戦略を取って来たといえます。しかし、この戦略は中国などとの競争では不利になるため、これからは、お客さまが望む高い付加価値を持つ、高価格でも売れる商品の開発が求められる時代に入っています。これは単に安い商品を提供するのではなく、安くはなくても高品質で魅力的な商品を目指すということを意味します。

とは言ったものの、それでも可能な限り原価を下げる努力も大切です。そこでそのカイゼン活動を支援するために、国からの補助金を活用し、固定費を可能な限り公的資金でカバーすることで経営の安定を維持することを提案しました。

Q社長は頑張って補助金申請の対象となるように一部計画を変更した上で手続きに挑戦し、無事に認可がおり、最新のレーザー加工機の導入が決定されました。P社は普段からカイゼン活動をしており、整理整頓で新設備の導入に必要な場所はこのプロジェクトの開始と同時に確保していましたが、新しい工程でのモノづくりは初めての挑戦であり、担当者は研修を受けるなど一から勉強をする必要がありました。それ以外にも、新設備が安定して稼働するまでの期間の出荷に問題を起こさないための事前の作り貯めや、補助金が入金されるまでの資金繰りなどにも大変な努力が必要でした。

これらの努力は実を結び、レーザー加工機は期待通りでの性能を発揮し、バラツキのない高い精度を出すことができました。その結果、P社はより高品質な仕様の新商品を市場に出すことができ、幸いにも市場で高い評価を受け、売り上げの向上に繋がり、高性能スペックを持つ会社としてのブランド力を付けることができました。これらを通じて、お金を上手に使うカイゼンの価値が明らかになったのです。

カイゼン活動とはお金をなるべく使わない、コストを下げる活動だと思い込んでいる人もたくさんいます。もちろんお金を使わないで成果を出すことは大切ですが、それだけでは大きな発展は望めません。時には大きな投資をして、更に大きなリターンを得ることもカイゼンの一環です。あるいはそのための補助金を申請することもカイゼンです。付加価値の高い商品を開発して売り上げを増やし、更に設備投資を行い、品質と生産性を向上させることで利益を上げ、結果としてお給料を上げる良い循環を確立することも大切なカイゼン活動です。