ヒューマンエラー対応の職場づくり 第16回

16. 余分なものはなくし、迷わせない

 演習をしてみましょう。のまず左側を見てください。〇はいくらありますか、数えてください。さて次は、右側に整列して配置したものですが、〇はいくつありますか?検数しなくでもすぐにわかりますね。さて、左側の〇はいくつでしたか?10個ですね。いや、11個かもしれないので、もう一度確認して検数したが、やはり10個かなあ?と不安になりませんでしたか。

 右側に整列したのは、10個のところに数字がついていますので、見ただけで10個と確認できました。その他の□や◇、▲や△、☆マークは、左側と同数を配置しました。人は騙されやすいのです。手品やマジックが楽しいのは、なぜそうなるのかが一見わからないからです。

 実際の現場はモノがあふれ混乱しているので、迷いが多くなりミスが発生しやすいのです。現場にモノがあふれるのは、リードタイムが長い、不良や手直しが多い、仕掛や在庫が多い、工程が離れ小島で分断している、情報の流れールが明確でない、などの要因があります。一気に改善することは難しいですが、できることからやってみましょう。

 工場の入り口から出口まで流れに沿って、使われている帳票や書類や掲示板にある注意書きや手順書やマニュアルを集めてみましょう。

 多くの実例にあるように、もう既に期限の切れた情報、古くなって誰も見ていない情報、破れて汚れたままの情報、関係のない場所にある情報、必要な場所にない情報などが発見できます。不要な情報は、すぐに撤去して必要な情報と入れ替えましょう。これも一度でも経験するだけで、情報を見る眼が一変に変わります。

 必要な場所に必要な情報が、必要な時に提供できる仕組みも合わせて変えます。さらに高さも統一して合わせます。3ヶ月毎に見直しを行い、期限を過ぎれば撤去しましょう。人は同じものは見えなくなります。

 掲示物には、発信者、ファイル名、発行日、あるいは有効期限を最下段にわかるようにします。そこまで記載するのかと言われそうですが、発信者が不在の時などにも、すぐに代わりの人が対応できるためです。

 次に、帳票類を工程ごとに並べていきます。工程間で受け渡しする時に、情報交換する場合に転記作業があれば、間違えやすくなりますので確認してください。また違う帳票になる場合、最も大切な情報は何かを明確にしてください。

 場合によって上にあったものが一番下に移動したり、文字の大きさが変わったりするものがあります。できるだけ同じ位置、同じ大きさ、見やすい左上側に配置するなど、修正できるものは実施してください。

 工場や部門間で帳票をすべて集めて並べて評価するだけでも、改善点はすぐに見つかります。共通化、共通認識を大切にしましょう。その機会が少ないと思われます。その機会をつくるのが、マネージャーや経営トップの役割です。


【図】 〇、◇、▲などのバラバラな配置、整列した配置