○○なカイゼン 第四話

第四話 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の商談不成立

このシリーズも4話目になりました。「偶然の産物と副産物」、「人のふり見て我社を直せ」、「壁に耳あり現場に柿内あり」とよく耳にする言葉をちょっと変えてタイトルにしています。今回は目に見えない情報についてお話しします。

自動車用精密センサーを作っているK社での話です。以前、K社の製品は自動車メーカーのほとんどに納入されていましたが、X社だけは例外でした。K社はそのことを長年疑問に思っており、いろいろと調べていたのですが分からず、どうしても納入できずにいました。

その時、K社の技術部長だったA氏が営業部長に変わり、X社に挨拶に行きました。そして以前からの疑問を解くためにX社の現場に入らせてもらいそのセンサーが使われてるところを見せてもらったのです。もちろん他のメーカーのものが使われていたのですが、現場の人にナゼA社の部品を使ってくれないのですか?と聞いてみました。すると、A社の製品はとっても良いから是非とも使いたいんだけど、入り数とか箱の形とか、うちの現場に合わないので使えないと言われました。それを聞いた部長はとても驚いて、では入り数と箱の形を変えれば使って頂けるかもしれませんねと尋ねると、そうだという返事をもらいました。そこでその場でダンボールを使って仮の箱を作って現場の人に見てもらいました。するとその方は、それだったらありがたいね、とおっしゃったので、帰社してすぐに箱の形を変えて提案したところ、受け入れられて初めての契約が成立したということです。

これまで歴代の営業部長が、なぜX社はA社の製品を使ってくれないんだろうと思って、他社の製品との性能の違いなどを調査していろいろ悩んでいてたのですが、そこには全く問題がなかったのです。まさか箱の形と大きさという現場での使い勝手が問題であったとは誰も思いもしなかったのでしょう。疑っていた性能はむしろ高く評価されていて、出来たら使いたいと思われていたということでした。あくまで結果論ですがA社は長年にわたり無駄なことをやっていたということになりました。こういうことは、私たちの身の回りにたくさんあるのではないでしょうか。

今回のタイトルの元である「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という言葉の意味は、「知らないことを聞くのはその場は恥ずかしい気がするが、聞かずに知らないまま過ごせば、生涯恥ずかしい思いで過ごさなければならない」ということです。A部長は元々が技術部門の出身で、X社の技術担当が以前からの知り合いで親しかったという関係があったようですが、誰もが分からなかったことがこのような形で分かり、一瞬で長年の問題が解決してしまうというのもすごい話ですね。疑問を聞くことができる関係を築くこともこれからの経営には大切だと思います。

カリフォルニアのシリコンバレーで働いているエンジニアたちは、日本では考えられないくらい頻繁に転職します。しかしそれぞれの人の働き場所は変わっても、エンジニア同士はSNSなどでつながっていて、もちろん所属している会社の秘密を漏らすことはありませんが、それ以外ではお互いが助け合っているそうです。転職とはいいながら、シリコンバレーという会社の社内での人事異動みたいなものだというのを当事者から聞いたことがあります。これからの製造業にとって、このような形での協業というのが必要なのではないかと思っています。

日本カイゼンプロジェクトもそのような情報のお手伝いをしたいと思っています。お困りのことがあったらご遠慮なくお問い合わせください。