「カイゼンの基本」について、これまで21回にわたって生産現場と事務所のカイゼンについてお話をしてきましたが、今回で基本編の最終回としてまとめを行いたいと思います。
今回実行した一連のカイゼンを振り返ってみます。スタートは生産現場のカイゼンでした。5Sの実行から始まって、在庫の持ち方の見直しを行い、そこで空いたスペースの使い方、モノの流れや作業のカイゼンを行いました。そして、品質のつくり込みなど検査のカイゼンにも着手し、生産性・品質向上や在庫削減などのカイゼンを行いました。5Sを行うことで余分なモノがなくなり、それまで見えなかったいろいろなことが見えるようになり、気づかなかった問題点の発見やカイゼンに必要な場所の発掘ができました。
そして事務所のカイゼンを行いました。事務所も生産現場と同様5Sからカイゼンを始めました。事務所の仕事はそれぞれの人が何をしているのか見えにくいので、個人のカイゼンにとどまっていることが多かったのですが、製造部門の要請の見える化やボトルネックの特定、個人の仕事量や見えない問題の把握をするなど組織的にカイゼンを進めるにつれ、仕事内容が見えるようになりました。その結果、仕事が自部門内だけでなく他部門の人にも見えるようになり、情報を共有化しながらカイゼンに着手したので連携が生まれ、全体最適というものを意識することができ始めました。そしてこれまで問題であった課題のフォローもできるようになり事務所の仕事のレベルが上がり、結果として製造部門のサポートに結びつくようになりました。
私はこの一連のカイゼンが成果を上げた理由は何かと言いますと、一言で「見える化」であるという結論を出しました。なぜ見える化が必要か?ですが、答は非常にシンプルで「見えなければカイゼンができないから」です。カイゼンするためには、問題点を知ることが必要であり、そのためには見える化することが求められます。見える化がされると、自分に見えるだけでなく他部門にも見えるようになることも見える化の重要なポイントです。何が見えないかを探すことも見える化といえます。
生産現場だけでなく事務所もまず5Sをし、問題を見え易くして、活動をスタートしました。整理・整頓・清掃をすることにより、不要なモノが置かれていないか?必要なモノが使いやすく置かれているか?清掃がキチンとされているか?などの3Sの見える化ができましたが、それだけでなく3Sが継続的に行われているか?決められたルールが守られているか?といった清潔・しつけの見える化も進みました。この全部門が5Sをして基本の状態の見える化から始めたことは、その後の活動につながる大きな効果があります。
今回実行したカイゼンは、5Sをはじめとした基本的なレベルの内容であったにもかかわらず、部門間にまたがるような大きな変化を起こすことができました。見えることで問題が発見され、見えた問題を共有することでカイゼンテーマが生まれ、それを皆で解決するという流れになったのです。そういう意味で、「カイゼンの基本」では「見える化」が大きな役割を果たしていたということでした。改めて「見える化」が持つ力に着目して更に大きな成果を上げるカイゼンを実行いたしましょう!