カイゼンとは? 第二十一回

カイゼンの基本21 ~事務所のカイゼン8~ 事務所のカイゼンまとめ

これまで、事務所のカイゼンについて7回に渡りその基本的な進め方についてお話しして参りました。8回目の今回はこれまで行ってきたカイゼンを振り返ってまとめてみたいと思います。

製造現場のカイゼンと同様、事務所でも5Sからカイゼンを始めました。この間のカイゼンはシステムや設備を変えるような大掛かりなものではなく、一見、地味に見えるカイゼンがほとんどでしたが、組織的な問題解決につながるような全体最適を生み出しました。その結果、長年続いていたムダな仕事を止めるフォロー、部門間の連携を深めるフォロー、部門間のボトルネックを解消するフォローなどが生まれました。

一見地味に見えるカイゼンであってもそれが大きな成果に結びついた理由は、参加者全員が全体最適をテーマとして認識できたからです。もちろん、最初から全員にその認識があったわけではありませんが、他部門との連携を通じて、自分たちの業務だけでなく他部門のことも考えなくてはいけないことが分かり、部分最適だけではカイゼンができないことに気づきました。そして、事務所の全部門が参加していることにより、この全体最適のカイゼン活動が可能になりました。

製造部門は人数も面積も大きいのですが、部門全体が生産という一つの仕事をしていて工程も見える形で連続しているので、生産性、品質、安全など全員に共通するテーマが設定し易く、生産の流れに沿った全体最適のカイゼンがしやすいのです。

一方、事務所部門は製造部門と較べると各部門の人数や面積は小さいのですが、部門数が多く仕事内容も多岐に渡るため、製造部門のようには共通のテーマが明確になっていないことが多く、カイゼンをしていたとしても個人や部門内の問題解決のレベルでとどまりがちです。しかし事務所部門が製造部門および全社に及ぼす影響は大きく、成果が大きい良いカイゼンができるか否かは経営に大きな違いを生みます。

これまでのカイゼン例にもありましたが、例えば営業部門と設計部門がお互いに必要な情報をどれだけ早く多く共有化できるかによってお客様への対応スピードが大きく変わります。部門内だけでなく部門間でも一緒にカイゼンを進めることができれば更に大きな効果が生まれることは明らかです。

だからこそ事務所部門には部分最適だけではなく全体最適でのアプローチが必要なのですが、例え一部門であっても自分たちにカイゼンは関係ないという部門があれば、全体最適のレベルにはなれません。あるいはカイゼンに興味を持つ人が少なく、参加者数が不十分であると狙い通りのカイゼンを実行できませんし、部門間のやり取りにも抜けが出る可能性があります。部門が多いからこそ全部門の全員が全体最適のカイゼンの大切さを理解して興味を持ってもらうことが必要になります。

そのための施策として、例えばカイゼン発表会を実施して、お互いのことを知り評価し合うなどしてモチベーションを上げ実行レベルを上げることは有効です。全体最適のカイゼンには他部門のカイゼン成果も見ながら自分たちのカイゼンを行うことや、部門間のやり取りが必要だからです。またみんなが頑張っていることが伝わりこれまでお互いが独立して仕事をしていた部門の間にチームワークが生れるからです。その結果、カイゼン活動に多様性と総合力の両方が加わり、より大きな成果を生み出すことができるようになるのです。

事務所のカイゼンを全体最適の切り口で活性化させ全員参加で実行することで、製造現場のカイゼンもより大きな効果を生み出すことになります。私はカイゼンの基本についての大切な切り口は「見える化」だと考えており、次回は生産現場の5Sの話から始まった「カイゼンの基本」シリーズの総括としてその話をいたします。