今回は前回までに見つかった問題の解決策(フォローのしかた)についてお話しします。これまで個人の仕事量を把握し、個人面談をして苦労話を聞くなどして問題の把握を行いました。そこで分かった問題に対して次の3つのフォローを提案します。
①個人の仕事量や仕事の難易度による問題を部門内でフォローする。
②事務所の計画進捗の不手際などで、製造部門の生産に支障をきたさないためのフォローをする。
③事務所の様々な部門間での連携をスムーズにするためのフォローをする。
まずは自分たちが部門内でできることから具体的にフォローしていきたいと思います。事務所内の業務の遂行状況を見ると、一部に昼休みも十分に休憩しないで仕事をし続けている人や、仕事を家に持ち帰っている人がいます。このような仕事のやり方は短期的には成果が出たとしても、中長期的には健康面やモチベーションなど様々な面で大きな問題になる可能性が高く、根本的な対策を取るべきです。まず止めてもいい、あるいは減らして大丈夫な仕事がないかを探してみましょう。
A社総務部では月末になると特定の人が残業をしなければならないことがありました。毎月初めに先月の生産や品質・安全といった工場の実績を書類にまとめて全管理職に配布するためです。実は以前から工場のほとんどの情報はネット上の共通ファイルから取り出せるようになっており、この書類は不要でした。この機会に総務部長が社長に提案して止めることになりました。事務所にはこのような昔は必要であったけれど今は不要という業務が結構残っているものです。
次に生産ラインに支障をきたさないためのフォローとしては、事務所部門が生産遅れをなくすスケジュール管理のやり方を構築したり、プロジェクトマネジメントの実践をしたりしてサポート体制を更に強化したいものです。そのためには事務所と現場がお互いをより深く知ることが有効なので、例えば双方のカイゼン発表会にそれぞれが参加し合ったり、活動スケジュールを事務所と現場の両方から見える化したりすることをお勧めします。進捗会議については週一回の頻度で行うなど優先順位を上げて行うのです。
B社の設計部門の人たちはお互いの会話が少なく、チームで仕事をするモチベーションが足りないという問題がありました。そこで上司の発案で、全員でカイゼン案を出し合うカイゼン会議を開催し、実行したカイゼンを工場のカイゼン発表会で発表したところ、他部署の人たちからもっと設計の仕事の状況などを教えてほしいとクレームのような励ましをもらいました。それがきっかけとなって自分たちに対する要望を知った設計者たちに会話が生まれ、それが他部門との会話が増えることにつながり、調達や営業、管理部門とのコミュニケーションも増え、在庫情報や生産進捗情報を共有するようになり、事務所部門の速度感は生産ラインを助けるまでに成長しました。
最後に部門間での連携をスムーズにするためのフォローについてお話しします。例えば製造部門では当たり前に実行している多能工化を事務所でも実行していただきたいと思います。他部門の仕事を学ぶことによって自分の能力が上がるだけでなく、会社全体の仕事の流れが分かるようになりカイゼンの対象がより広く全体最適に近づくことになります。時期によって仕事の負荷が変動する人は特に進めて戴きたいと思います。
C社では数人の事務所の人がCAMを学び、製造部門のサポートができる多能工化を目指しています。それ以外にも一人の社員がRPAの外部講習を受け社内講師になり、講習に参加できなかった部門の人たちに少し余裕がある時期に教育しました。
このように、まず部門内でできるフォローから始めてそれぞれの部門の能力を向上させます。その結果、事務所の能力が向上し、生産ラインに対してのフォローも可能になります。フォローするだけでは、個人によっては周囲に頼りっきりになってしまい、成長に遅れが出るのではと心配になるかもしれませんが、まずは製造部門の生産に支障をきたさない状態を作ることを優先します。その上で個人の成長を検討する方が、指導される側も目指す方向が分かるのでトータルでより良い結果に結びつくのではないかと考えています。