カイゼンとは? 第五回

カイゼンの基本5 ~在庫の正しい持ち方3 これは在庫?~

これまで5Sと在庫の管理についての見落としがちな点に焦点を当ててお話しして参りました。整理・整頓をして、使うモノをだけを使いやすいように置き、在庫をしっかり管理することによって、必要なモノしかない状態になり、そして清潔・躾によってその状態が維持されるので、工場はスッキリして効率的に働ける場所となっています。

しかしこのような活動を続けていても、管理できていない状況が起きることがあります。どこかに落とし穴があるようです。ここで私が経験した事例をご紹介いたします。

A社はこれまで5Sをしっかり実行し、在庫管理レベルも向上していました。そのA社が部品のレイアウト変更を行うことになり、私のカイゼン会の日を使って1日でモノの入れ替えと床の白線ペンキ塗りまでの全てを終える予定を立てました。モノの移動から始まった作業は順調に進み、最後に白線を引いて完成というところで問題が起きました。白のペンキが足りなかったのです。事前のチェックでは十分にあるということでしたが、実際に倉庫から持ってくると、使いかけの缶が多く、硬化して使えないモノやほとんど空のようなものがあり必要量に足りず、その日にレイアウト変更を終えることができませんでした。

A社は普段から5Sや在庫管理をしっかりやっていたのになぜだろうと不思議だったのですが、他社でも在庫の整理が出来てきたときに、「これは在庫ですか?」という質問があったことを思い出しました。設備に供給するオイルやグリース、工場内に白線を引いたり機材を塗装したりするペンキ、ハンドグラインダーの砥石などが「これ」に該当し、いわゆる備品(消耗品、副資材)と呼ばれるモノです。きれいに置いてあるといっても隅っこや端っこに置いてあり、5Sや在庫チェックの時も在庫ではない備品だという理由で手つかずになっていたのです。A社でも同じことが起きていたのです。

備品は生産に直接関係しないので、生産計画に合わせて調達されたり現場に届けられたりということがないので標準化が難しく、捨てられないけれど片づけ方が分からない、だから端っこに置かれるといったことになりがちなのです。コピー機のコピー用紙などの事務用品は担当者と使い方が限定されるので、残り一箱になったら購入しようなどのルールが成果を出すことはよくありますが、多くの備品は人によって使う数量が変動したり、次に誰が使うのかわからなかったりと不明確な点が多いので、本来でしたら使う人たちが集まってルールを決めるべきなのですが、それができていない職場が多いようです。

ちょっと厳しめな言い方をしてしまいましたが、この備品に関するルール決めは難しく考える必要はありません。5Sの活動をする際に備品の置き場所を決め整頓をすること、在庫整理や棚卸しの際には備品の最適化もするというだけのことです。
備品の量の管理については管理担当者を決めることでも解決できますが、使用者が複数部門に渡る場合は最終使用者の部門と残量を記載しておくと発注者はそれを管理するだけで良くなります。

備品は5Sの時にも在庫管理の際にも後回しにされがちな存在ですが、そのまま放置しておくとせっかくの5Sが無駄になり、また散らかる原因となります。しっかりと備品も整理し残量を確認することが必要です。