カイゼンとは? 第二回

カイゼンの基本2 ~できていると勘違いされる5S~

先回から「カイゼンの基本」と題して意外と見落とされていたり、できていると思っていたけれどそうでないカイゼンのご紹介を始めましたがいかがでしたでしょうか?第2回目の今回も5Sからテーマを選んでお話しいたします。

「5Sをやった直後は現場がきれいになるのだけれど、その後の維持継続が難しい」という言葉をしばしば耳にします。どうして難しいのかを知るために更に話を伺うと「整理で使わないモノを処分して、整頓で取りやすい置き場所を作って、きれいに清掃をして現場がきれいになった」という3Sの実行で止まっており、残りの2Sの清潔と躾(しつけ)に未着手なことが多いのです。

清潔と躾、それぞれの意味を調べてみると大体は次のような意味であると分かります。

清潔:整理・整頓・清掃の3Sをして、常にきれいな状態を維持すること。
躾:常に清潔な状態を習慣付けるために、ルールを作り教育や指導をすること。

これを読むと、5Sには最初から維持継続をする仕組みが織り込まれており、維持継続が難しいということは、5Sをやっていると思っていたけれど実は勘違いで、最初の3Sしかしていなかったということになります。そこで清潔と躾の進め方を考えていきたいと思います。

まず、清潔についてですが、工場で働く皆さんが清潔な状態を維持したいと思うことが必要です。一人でも散らかす人がいると継続ができません。

そして清潔な状態が維持されているかどうかが常に把握されていて、もしその状態が崩れたらすぐに対応ができることも大切です。

それを受けて、清潔を維持するための具体的な教育や指導、そしてカイゼン活動の計画やルール作りなどが必要になりますがこれが躾です。

清潔な工場ではモノを探さないので効率的に仕事ができ、必要なモノしかないので余分な支出がなくなり、モノが少ないのでゴミやホコリが減り品質も良くなります。新入社員が来た時に、働きたいと思うのはどちらの工場でしょうか。そして、清潔な工場は何よりそこで働く人のモチベーションを向上します。まずはこのような清潔が必要な理由を皆さんで共有しましょう。

その上で清潔を維持するための手段が必要になりますが、その一つとして定期的に5Sパトロールを行い、常にその状況が把握できるようにしている工場も多く見かけます。5Sパトロールはメンバーを選出し、皆さんでチェックリストを作り、自分たちの清潔に対する基準を決めて現場のチェックを行います。そしてパトロールした結果を皆さんにお伝えしてカイゼンにつなげて戴くのですが、最後にとても大切なことがあります。

「躾」という言葉には上から目線の少々きついニュアンスがあり、発見された問題へのカイゼン指示が厳しい感じになりがちです。現場を見ないで結果から叱るようなことがあったらそれは最悪です。益々上から目線になります。では、ほめればいいのかというとそれも必ずしもそうとは言えません。結果だけ見てほめるのであればやはり上から目線の印象を持たれる可能性があります。ルールだからやれ!ではなく、普段からちゃんと従業員の仕事を見ていて、その上で良いところを見つけてほめてあげると皆が気持ちよくカイゼンを維持できます。いつも3Sが維持されている優秀な所は見ないでスルーしても大丈夫といった判断が出る可能性がありますが、ここも必ず訪問して、「いつもきれいな状態ですばらしい!」と伝えるのです。使い終わった工具をきちんと元の場所に戻す従業員がいたら、そのたび「いいね!」と声をかけるなどです。途中の経過もしっかりと見てそこで指示をすることで躾が機能するということです。

このように5Sの最後の2つのSは両方が一体となって機能するのです。もし維持継続に問題がある場合は是非とも清潔と躾の2Sをやってごらんになって下さい。