モノづくりの現場探求 第十一回

人の育て方 ~人はほめて育てる!私のやり方~

人は褒めて育てるべきか、それとも叱って育てるべきか、について2回にわたって考えてきました。ほとんどの人が褒めて育てるべきだと思っているけれども、実際には叱る方が多いという実情も分かりました。どうしたらもっとたくさん褒めることができるのでしょうか?褒めることの大切さは分かっているので、次はその実行方法を具体的に研究するべきかと思います。今回は私が実行している方法をご紹介させていただきます。

私はカイゼンのコンサルタントとして、実際に現場でカイゼンを実行した人と直接に会話をし、その内容について説明を聞いたり質問をしたりします。ただそれだけなのですが、相手の方から柿内さんは人の話をよく聞いて、そして褒めてくれるからとても嬉しいですと言って頂くことがあります。その後、カイゼンの実行スピードやレベルが上がることが多いので、私との会話からヒントを得、モチベーションを上げているということは事実のようです。しかし私には特に意識して褒めているという実感がないのです。むしろ、自分では思いつかない発想や努力に心底驚いて、質問をしているような気でいます。

そこで、今回この文章を書くに当たり、指導先の方数人に電話をして、もし私の現場での会話に何か特長があるのであれば教えてほしいと聞いてみました。私が直接に聞いたので、正しくインタビューできているかは少々心配ですが、共通に言われたことが2つありました。それは柿内はやったカイゼンを全面肯定して決して批判しないということ。それと、カイゼン実行に当たって苦労したところとか強調したい点など、当人が聞いてほしいことを質問してその答をしっかり聞いてくれるので嬉しくなりヤル気が出るということでした。

1つ目ですが、確かに私は発表されたカイゼンを批判することはほとんどありません(結果として安全や品質が低下するといった時は反対しますが、めったにありません)。カイゼンなので、以前の状態より良くなっていることは間違いないので私はそこに着目します。一方、直接の上司の方には予定より遅いとか、出来ていないところがあるといった問題の部分が目につき、どうしてもそちらについての指摘が増えてしまうのでしょう。もちろん、パーフェクトではない場合は多々ありますが、その場合私は「次にしてほしいカイゼンネタが見つかったので、もし可能なら次回までに実行して発表してください。次回が無理でも遅くともクリスマスまでにはお願いします。」などと言います。私の経験から、出来ていない部分は叱るのではなく、出来たら褒めるという予告編に変える方が、圧倒的にカイゼンが進みます。

2つ目は、このカイゼンに至るまでの苦労話は積極的に聞きます。やはり途中で失敗したり誰かに助けてもらったり、といった人に聞いてほしい苦労話が背景にはたくさんあります。しかしそれを自分から聞いてほしいとはなかなか言えないですから、私が聞き出すようにしています(私はそういう話がとても好きです)。その苦労話を社長や上司が頷きながら聞いてくれると、実行した当人は報われた気持ちになるということでした。

それとカイゼンの専門家として必ずしていることがあります。それはこのカイゼンがなぜ良いのか?ということを専門的な面から説明することです。意外に思われるかもしれませんが、実際にカイゼンを実行された方がそこを知らずにカイゼンができてしまうことがあるのです。専門的という言葉はちょっと大げさかもしれませんが、例えば忙しいからやったカイゼンであった場合、忙しさが解消されたらば元に戻ってしまう可能性があります。しかしこのような場合の改善は技術的に普遍的な意味のある改善であることが多いのです。そこで忙しさが解消した後でも、この改善は元に戻すことなく、継続するということを理解してもらいます。

私の現場でのカイゼンについての会話のYouTube動画がありますので、ご参考になさっていただければ幸いです。日本カイゼンプロジェクト会員企業の株式会社いそのボデー様でのカイゼン会の様子です。 


URL: https://www.youtube.com/watch?v=E6ZEiuC3D08&t=305s
                                                                                                                          人材育成はとても大事な仕事です。褒める方法を更に研究して実行し、より多くの人材を育てて参りましょう!