モノづくりの現場探求 第三回

適正在庫について 3 ~デジタル化でできること!~

先行きが不透明な環境下で、材料調達をジャストインタイムから少し早め多めに買うことで置き場所が足りなくなる!その対応の実例を先回書きましたが、今回は更にデジタルを使ったらどんなことができるのかを考えてみました。

アナログでの置き場所の管理は、定品、定位、定量の3定の整頓が中心だと思います。すなわちそれぞれの品種の置き場所と数量を決定して、その状態が維持できるように棚などに表示をすることでした。これは指定席管理です。指定席管理は定番の方法ではありますが、不便なことも多い管理です。まず管理したい品種の場所をすべて前もって準備するので、大きな面積が必要です。そして各区画の中で量が増減するので空きスペースが常に発生しもったいないということ、そして突発で入荷が増えると場所をはみ出て管理が乱れるということなどです。

指定席管理でなく自由席管理であれば、空きスペースが減るので必要な面積は少なくなります。アナログでも自由席管理は可能ですが、人が毎回モノを置いた位置や数量をホワイトボードなどに記録する必要があり面倒なのと、同じモノが何ヵ所かに分散した時、必要なモノを先入れ先出しで使うのは管理が複雑で大変です。

しかしデジタルを使うと、人がやる面倒な仕事をすべてコンピュータがやるので、簡単に自由席管理ができるようになります。Amazonの倉庫がコンピュータとロボットとスキャナーを活用した自由席管理であることは有名です。YouTubeで「Amazon、棚ロボット」と入れると倉庫内のすごい仕組みを見ることができます。これはあまりに大規模で先進的過ぎて少し気後れしてしまいますが、このシステムを使わなければできないということではありません。要はモノを置いた棚の位置とモノの品名と数を記録して、棚位置と商品を紐づけするということです。Amazonではロボットとコンベアがモノを運んでいますが、今回は自動化のカイゼンではなく面積の確保が目的ですので、運搬はこれまで通りです。

デジタル化であるけれどお金をかけずにすぐできる方法としては、まずはタブレットを使うやり方があります。例えばタブレットにエクセルオンラインのようなウェブでつながり複数の人で使えるソフトをインストールして、そこに棚の形を書いて、出し入れの都度、品種と数を簡単に入力できるようにして、それをパソコンで管理するやり方があります。

あるいはバーコードやQRコードを使って、棚位置や品名を読めるようにして、それをリーダーで読ませてモノと位置を紐づけることもできるでしょう。このような順番で次々と試していった結果がロボットを使ったAmazon の倉庫になるということだと考えています。

このやり方だと、1カ所に複数種類のモノを置くこともできます。そして指定席ではないので空の場所を取っておく必要がありませんから、面積は大幅に節約できることになります。

繰り返しで生産が行われるため、ロットで管理されるモノはこのようなやり方がいいと思いますが、一個ごとの管理が必要な場合はどうしたらいいでしょうか?話はそれますが、実は先日、私は大きな失敗をしました。あるところでパソコンを置き忘れてしまったのです。しかし、私はパソコンにiPhoneと連動したアップルのエアタグ(AirTag)という追跡装置(?)を貼ってあるので、今パソコンがどこにあるのかをスマホで見ることができ、すぐに取り戻すことができました。もしこれを商品に貼れば、それがどこにあるかが詳細にスマートフォンに表示されます。例えば一品管理で前もっての場所決めが困難な商品の管理にはこのような仕組みも使えるのではないかな…、デジタルはすごいな!と思っています。

このようにアナログの時代には指定席管理をしないといけなかったのが、デジタルの時代になると自由席管理が可能になり面積効率が格段に上がります。

私たちはこれまでたくさんのカイゼンを実行し経営を支えてきました。そしてその成果は今でも大いに役に立っています。しかし、もしそれらのカイゼンがアナログ時代のモノであるとすると、当然ですが、アナログなりの限界がありました。しかしそのアナログの限界をデジタルの導入でやすやすと乗り越えて更なる成果を上げることができます。今回の事例はまさにその事例です。質量のあるものの加工は相変わらずアナログのプロセスですが、情報はすべてデジタルにより自動化することが可能だからです。