脱力・カイゼントーク 第40回

カイゼンの活性化 現場調査

機械加工・組み立てのM社のN社長から「昔はカイゼン活動が盛んだったのですが、今は昔のような勢いがありません。活動を復活させようとカイゼン組織を立ち上げたのですが、うまくいっていません。お手伝い願えませんか?」という依頼がありました。

さっそくM社に伺い、N社長からカイゼン推進を担当するO部長を紹介されました。O部長は、M社にはカイゼン提案を奨励する制度があるにも関わらず、提出数が年に数件と少なく、カイゼン件数を増やすためにはまず制度の見直しが必要だとの見解を示されました。一方、どのようなカイゼンが必要かという質問には明確な答が返って来ず、現場との接点が少なそうな点が気になりました。

その後、3人で現場を歩きました。以前カイゼンが盛んであったというだけあって、当時の名残であるユニークな作業台や工具置き場などが見られましたが、その一方で、表示の更新が雑であり、整理整頓が不十分であることから、カイゼン活動が勢いを失っているのも見て分かりました。

現場のモノの置き方を見ると、「工具置き場」のような大括りの表示が多い点が気になりました。「それぞれの工具の置き場所を決め、名称を表示して誰にでも分かるようにしたらどうでしょうか?」とそこの職場のリーダーのPさんに質問をしてみると、今の表示の仕方で何の問題もなく、このままでいいと反論されました。

私は反論されると思っていなかったので驚きましたが、本当に問題がないかを確かめてみたくなり、「ではこの設備に使用するスパナを取ってみて下さい」、とお願いしたところ、サッと一動作で該当するスパナを選んでくれました。見事な反応であったので私は感心しました。次にその場にいた若い人に、別の設備を選んで同じ質問をしてみると、Pさんのようにスムーズには対応できず、たくさんあるスパナの中から数本の候補を選び出して、その中から現物合わせで選ぼうとしていました。

Pさんは慣れているので問題はありませんが、会社では不慣れな人でも間違えずにすぐに取り出せることが必要なので、モノの表示はもう少し分かり易くしませんか?と申し上げると、Pさんも同意して下さいました。

O部長はこのやり取りを見て、どういう所にカイゼンの対象があるかのヒントを得たようです。そこで、私はO部長に、まずはこのような基礎的なところからカイゼンを進めていきましょう!と投げかけたのですが、O部長は果たしてみんなが協力してくれるかどうか分からないと自信なさげでした。

そこで、「O部長ご自身はどのようにカイゼンに取り組んでおられるのですか?」と聞くと、「私は指揮をとる立場です」という答でした。M社ではこれまで管理職はカイゼンをさせる側であり、実行は従業員がしていたようですが、私はそこに問題を解決する糸口があると思いました。そこで私は、O部長もカイゼンに参加し、皆でカイゼンを実行する体制にしてみてはいかがかと提案しました。O部長に反対されるかな…と思いましたが、OKを戴きました。一部始終を聞いていたN社長も賛成して下さり、部長以下、かかわりのある方全員参加のカイゼン活動を始めることになりました。

そこで私はO部長と現場の皆さんに「私が来月来るまでに全員が1人1件のカイゼンを実行する宿題を出しますのでよろしくお願いいたします。次回は全員でそのカイゼン発表会をしましょう!」と皆さんにお願いしました。ただし、そのカイゼンはユニークで効果の大きいものでなければいけないということはなく、棚の表示のような簡単なことでもOKですということにしました。