新しいモノづくりの考え方 第17回

これからの日本式デジタル化⑯

先日、友人のAさんと最近のデジタル化について話をしていた時に彼から「僕はデジカメが出始めた20年くらい前から使っていて、自分はデジタル面では進んでいる方だと思っていたんだ。だけどこの頃の若い人たちがスマホを自在に使ってすごいことをしているのを見ていると、急に置いて行かれたように感じるんだけどどう思う?」と聞かれました。

デジタル化とかDXとか、最近突然に言われ始めたように感じるのですが、デジタルという言葉自体はかなり以前から使われていました。私たちはデジカメやデジタル時計などを昔から使っており、その面での先進国だと言われてきました。しかし今、日本はデジタル化が遅れているといわれています。一体、何が起きているのでしょうか? Aさんが急に置いて行かれたように感じるといった気持ちはよく分かります。そしてそれは今の日本が置かれた状況と似ているようにも思えます。

Aさんが20年くらい前にデジカメを使い始めた時点で、フィルムや現像がなくなり、写真を確認して撮り直せるので正確性も格段に上がり、QCDが大幅にカイゼンされました。この時点でのデジタル化は最新機能のデジカメを使い始めることを意味していたと思います。

次にデジカメで撮影したデータをインターネットにつなぐことで、撮った写真を必要な人に瞬時に送れるようになりました。今はスマホにデジカメの機能が入っていますから、Aさんもですが多くの方が実行しています。ここでのデジタル化は持っているデジタルデータをネットにつなぐことです。

この時点でのカメラのデジタル化は、機能は大幅に向上していますが、写真の画質ではまだフィルムに届かないなど一長一短のレベルにとどまっていたように私は感じていました。

しかし現在、オンラインを使った情報の共有ができるようになり、大きな変化が生まれています。例えば写真をInstagramのようなSNSに載せれば、これまでは限られた範囲でしかできなかった写真情報の発信が、その情報を必要とする世界中すべての不特定多数の人たちに渡せるようになりました。これによって情報を交換する対象が圧倒的に増加します。しかし、もしその写真が魅力的でなければ誰にも見てもらえません。「インスタ映え」という言葉がありますが、インスタに写真を投稿する人はどうすればより多くの人に見てもらえるかを考えて構図を作っているそうです。それを受けてより映える背景を用意する店や街も増えていると聞きます。すなわち、これまでは変化するデジタル機器の使い方に対応していればよかったのですが、これからはマーケットとの関係にも目を向ける必要性が生まれたといえるでしょう。Aさんもこれまでは新しいデジカメを手に入れることで何とかなると思っていましたが、これからはそれらをどう使うかの知恵を絞ることにはまだ未着手なので、置いて行かれた気持ちになったのでしょう。

カメラのデジタル化から始まった話が、いかにお客様を理解するかが大切といった結論になりました。これが意味するところは、デジタル化というのは経営においてはあくまで手段であり通過点に過ぎず、決してゴールではないということではないでしょうか。デジタル化でお客様のデータを上手に取り、その情報を使っていろいろな経営判断を見える化して、求める答を出すマーケティングをすることです。その上で必要なサービスを提供して利益を出すのがDXの目的です。そしてここに、日本は現在デジタル化で遅れているという指摘に対するカイゼンの切り口の一部があるように思います。

今回は、Aさんとの会話を通じて、この本来のDXの目的に思い当たりました。これは私にとってはとても重要な発見でありました。皆様はどう思われましたでしょうか?