新しいモノづくりの考え方 第1回

時代によって変わる常識

カイゼンの基本をカバーした『儲かるメーカー 改善の急所101項』の101回に渡る連載を終えました。長期間に渡りお読みくださり本当にありがとうございました。これからは、これまでとは少し視点を変えて、改めてカイゼンについてお役に立つお話をして参りたいと思います。

今回は、私の約50年のモノづくり経験の中で起きた自分の常識の変化について書かせていただきます。

私は23歳の時に日産自動車に入社し、工場でカイゼンを管理推進する部署に配属になりました。そこで仕事の前提になることとして、次の2点を部門の先輩から教わりました。当時世の中のことをほとんど知らなかった新入社員の私には、目からうろこが落ちるような新しい、そしてよくわかる話で心から納得しました。

① 改善をして能率を上げて手待ちを作り、その手の空いたところに更に多くの仕事を入れることが生産性向上である。
② 値段はお客様が決めるのであって、生産側では決められない。戦後、八幡製鐵が「鉄は国家なり」と言い、コストに利益を足して値段としていたが、もうそうすることは不可能。だから、改善をして生産性を上げてコストを下げて、利益が出るようにする。

私は、この2つは変わることのない定理のようなものとして頭に刷り込んでおりました。しかし最近は、この考え方は高度成長期の日本の考え方であり、今はここから脱却する必要があると思い始めています。

どう変わるべきか…ですが、

① 改善をして手待ちを作り、その手の空いた時間をカイゼン実行の時間に充てる、あるいは早く仕事を終えて帰る。すなわち労働時間を減らし、創造力を増すような時間の使い方をしたい。休むことを苦手とする日本人の習性として手待ちを仕事で埋めてしまいがちだ。しかしその結果、考えることが必要な高いレベルの仕事ができておらず生産性向上が止まっている。
② 少し高くてもお客様が納得して買って下さるような魅力的な商品やサービスを創り出すことが必要。これまではみんなが似たようなモノを造っていたので差別化できず、買ってもらうためには値下げが必要であった。これまでのカイゼンは品質(Q)とコスト(C)と納期(D) に注力していたが、それだけではお客様は魅力を感じない時代になっている。

日本の製造業は過去の高度成長時代の成功体験に引きずられて、今必要な変化に対応しきれていないとよく言われますが、私自身もその傾向を未だに捨てきれておりません。ご一緒に、世の中の変化を柔軟に取り込んで参りましょう!