3月のご挨拶

 3月になりました。今年の冬は例年より寒かった気がしますが、ようやく暖かい日差しの日が続くようになりました。春めくという言葉がありますが今がまさにそれ、嬉しいです。しかし気候は良くなってきた一方で世の中はちょっと暗い様相を呈しています。ロシアのウクライナ侵攻には驚きました。これから日常生活にもビジネスにもいろいろな影響が出てくる可能性が高く、春を満喫できるのはもう少し先なのかもしれません。

一般的に3月は年度末であることが多く、決算時期であり人事異動や新入社員を迎え入れる準備の月でもあり、一年で一番変化が大きい月であるともいえます。

世の中が変化することに対して、私たちも変化をしなければなりませんが、この時期の変化の方向として「5Sのような基本に返る」ということと、「デジタル化のような時流に合わせる」ことの二つが必要なのではないかと思います。今風にいうと、現在うまくいっている事業を更に磨くこと(知の深化)と、これからの事業を開拓すること(知の探索)の両方を同時にする必要があると主張する「両利きの経営」に近いことになるかと思います。

今回はこの時期のテーマとして、どんな変化(カイゼン)を起こすべきかを考えてみようと思います。

まず決算という会社の大事な時期ですが、売り上げは数値化することが当然可能です。しかし、カイゼンがどのように役だったかを決算の数字から読み取れるでしょうか?自動車部品を作っているT社では、コストダウンのカイゼンを始めました。厳しい受注競争を勝ち取るために、受注獲得準備の段階で新型車の部品を受注できたと想定して、仮の組み立てラインを作りカイゼンを織り込んだ状態でメーカーに提示し、見事に受注ができました。このラインの企画のテーマはどんな変化があっても柔軟に対応できて利益を上げることが可能なラインを作ることでした。そのために数量の変動に配置人員をフレキシブルに移動し調整できるようなラインレイアウトと作業者の多能工化を進めました。その結果、今期の決算はコロナ下で厳しい状況であったにもかかわらずこれまでにない利益を計上できました。
これは、売り上げとカイゼンがうまく融合できた結果だと言えます。現場カイゼンに力を入れたけど、売り上げは落ちているということもあるかもしれません。カイゼンした部門の数字とカイゼンのバランスをしっかり見つめ直しましょう。

次に、人事異動ですが、異動した方の仕事を新しい方が行う場合に、その仕事内容の引継ぎはどのようになされたでしょうか。その方が経験されたいろいろな出来事の中には、貴重な成功や失敗の事例などがあり、知っているのと知らないのでは大きな違いが生まれると思いますがそれらはどのように伝わるのでしょうか?欧米の様に人の移動が頻繁な職場では仕事のマニュアル化は進んでいますが、日本ではそこが曖昧なことが多くあります。工程のカイゼンや現場の効率化だけでなく、こういったカイゼンも後々大きな結果に結びつくことがありますので、チェックしてみてはいかがでしょうか?

新入社員の方が来る場合、どのように新しい仕事の内容が伝わるようになっていますか?
これも異動の時と同じくけっこう曖昧なことが多いようです。新人が来るとしても年に一回でそんなにしょっちゅうあることではないので、前回やったことがしっかり記録に残っていないということがあります。しかし間隔は広くても実は連続していますので、もちろん標準化の対象です。

カイゼンによって生まれる効率化、標準化というものは実は無限に存在します。
こういった準備が1年間を通して良いカイゼンを生み出すきっかけになるケースは非常に多いです。決算の数字だけでなくカイゼンとの連動性を見つめ直す良い時期ではないかと思います。




日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫