4月のご挨拶

 4月になりました。年度始めの会社も多く、学校は新学期ですから、スタートの月ですね。桜が咲いて華やかな月ですから、明るく元気に行きたいものです。

新年度の新たな挑戦として、昨年からお話ししてまいりました今の時代のテーマである「ユーザーイン」ついてご提案してみたいと思います。

マーケットインの時代では、どれが売れるかは分からないけれど、どれかは売れることが分かっていたので、現場で実際に行う作業カイゼンや設備やレイアウトのカイゼンなどと、トヨタ生産システムのような少ない在庫で良い品質のモノをジャストインタイム供給する管理カイゼンが力を発揮しました。しかしユーザーイン時代になると、消費者は既に多くのモノを持っていて欲しいモノがない状態であり、モノは売れるものという前提が崩れるので、これまでのQCDのカイゼンだけでは対応しきれないことになります。新学期なので新しい教科書が必要です。

ユーザーインはアイリスの大山健太郎会長が唱えるコンセプトですが、モノづくりの私たちにもお客様が驚いたり喜んだりして買って下さるモノを創りだすことが求められる状態です。これまでは、営業が取ってきた注文をどう安く良く早く作るかが大切でした。しかしこれからは営業と一体となってお客様が欲しいと思うモノを創ることが求められるということです。

突然こう言われても、これまでそういうことはしたことがない…と困ってしまう方も多いと思います。もし何かを発明しなければいけないと言われたら誰でも困るでしょう。

しかし私が考えている新商品は発明レベルのモノではなく、皆でカイゼンをしている中で生まれる現実的なモノです。いくつかの例をご紹介いたします。

贈答用お菓子を作っているK社でのカイゼン会でのことです。現場での包装作業を、社長を筆頭に皆で観察していました。金属製の缶をビニールの袋に入れるのですが、袋が缶の大きさにぴったりなのでとても入れにくく、作業者は苦労していました。不良も多く問題だということが明らかでした。私はどうやったらうまく入れられるかを考えていたのですが、女性作業者がどうせ無理でしょうけど…というニュアンスで「もう少しだけ袋が大きければいいんですが…」と言いました。するとその場にいた設計の人がいとも簡単に「いいですよ、大きくします」と答えたのです。袋は大きくなり作業が楽になったのですが、それ以上のことが起きました。袋を大きくしたところ商品のイメージが良くなり売り上げが伸びたのです。これは新パッケージを創り出したと言っていいでしょう。

入れ物の話をもう一つ。センサーメーカーのY社はほとんどの自動車メーカーに自社製品を納めていましたが、ある一社だけがどうしても買ってくれませんでした。新任の営業部長はその理由が分からずいましたが、意を決してその会社とコンタクトを取りその現場の人と話をする機会を得ました。そこで理由を聞いたところ、Y社のパッケージが現場の使い勝手に合わないからという思いもよらないところにあることが分かり、すぐにパッケージをカイゼンして提案したところ即座に納入が決まりました。

どちらもユーザーインのカイゼンと言っていいと思います。このようなことはこれまでにもすべての皆様の会社でも起きていることでしょう。これからはユーザーインの時代が来ると意識するだけでいろいろなことが見えてくることでしょう。

日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫