少品種大量生産の時代では、作業を細かく分割して、それぞれを個々の作業者に割り当てて、全員が与えられた作業を繰り返すようにする方が効率が上がりました。品種が少なければ、同じモノを作り続けるので、一度ラインを設定したら当分変更がありません。各作業ごとに慣れた人を揃えた方が生産スピードも品質も上がりやすいし、短く分割された仕事を一つ覚えればラインに入れるので習熟が早くなり、訓練も容易です。もしこの仕事のやり方をスポーツに例えるならチームプレーではありますが、各ポジション毎に専門家がいる「野球」が最も近いと思います。
しかし、多品種少量生産、あるいは多品種変量生産の時代の現在、以前のように同じモノを大量に作り続けることは激減しました。一品種あたりの生産量は少なく、使う設備も部品もそのたびに変わります。それぞれの作業や工程で機敏に動けないと、小回りが利かないので、注文に全く対応できなくなってしまいます。そのためにはそれぞれの人が仕事の一部のみを知っているということではなく、仕事全体を知っていてこなすことができる能力が必要になります。
例えば、少品種大量生産時代での組み立ては1本の大型のコンベアラインにたくさんの人が配置されて同じものを大量に生産することができました。しかし多品種変量時代の今の組み立ては、一人がセルラインで一つの品種を丸ごと完成させるようになっています。求められるのは、スポーツに例えれば、ほぼ全員がすべてのポジションをカバーすることができて、状況に応じてお互いが協力し合える「バレーボール」型なのではないでしょうか。全員がネットの向こうの相手の動きを見ながら役割に応じて反応します。これは目標の共有化と多能工化が見事に行われているということです。
いずれはサッカーのように、敵味方が直接ぶつかり合う激しいモノづくりの時代がやってくるかもしれません。
今週の言葉 モノづくりの体制を、野球型からバレーボール型に変えよ。