松田が住んでいる鳥取県中部の八橋(やばせと読みます)地区は、横幅が約1.5kmの小さな町ですが、その割には4本の大小の川が日本海に注いでいます。その内3つの川には、約30年前から自宅の池で飼えなくなった鯉を、川に放流することがブームになりました。
冬になると近くの民宿で、鯉の刺身や味噌汁をご馳走になることも楽しみの一つでした(民宿の池で飼っている鯉)。いつしか鯉が川で繁殖するようになり、橋の上から眺めることができる風情のあるものになっています。大きな鯉は1m近くになり、まるで泳ぐ丸太のようです。川の流れは非常にゆったりとしており、パン屑を投げて観測してみますと10秒間に1m程度の流速しかありません。
鯉も普段泳ぐ時にも実にゆったりとしており、川の流れと同じ速度であったりまったく動かないこともあり、時速に換算すると0.36kmとまるで静止状態です。普通人の歩く早さが時速4kmですので、その10分の1です。餌を投げた時は、ゆったりとしていた丸太状の鯉も急に速度を上げて餌に向かいます。それを瞬間速度といいますが、普段の持続速度より速く数倍なるようです。橋の上から観察してみますと、1秒間に50cm程度の速度で泳いで餌に食らいつきます。時速としては、2kmほどです。
水中は空気と違って水の抵抗が数百倍も大きく、さらに泳いだ後の渦巻きによる抵抗も大きく、いくら流線型のマグロも持続速度が時速80kmは辛いものだと思っていました。図鑑の中には24時間休みなしで泳ぎ続けるとも記載されていますので、マグロはまるでスーパーマンになったような不思議な感覚になります。概略の数値として、潜水艦の速度は、30ノット(約60km/h)、魚雷は50ノット(約100km/h)、水上を走るモーターボートでも60ノット(約120km/h)ですから、マグロの速度を追って測定することは非常に難しいことです。速度の計測方法についての記述は明確なものがなく、釣り糸に掛かった魚がどれだけの速度で糸を引いたという間接的な計測方法でした。実際に魚に速度計を取り付けて測定することは、これらの測定機器などがなかったために、10数年ほど前からようやく正確な測定が可能なったのです。
カツオでも水中で時速60kmの速度で泳ぎ、さらに凄いのはカジキが時速120kmで泳ぐのだと図鑑に記載されていたので、今までその数値が頭に残っていたのです。しかしインターネットや動画サイトで泳ぐスピードを、計測する手立てを探すことは非常に難しく、ゆったりと泳ぐものしか発見できませんでした。
図1. マグロは潜水艦よりも速い?
図2. 実際に魚に速度計をつけて測定する