脱力・カイゼントーク 第18回

底辺の仕事 製造業へのリスペクト 未来への礎

ある就活サイトが13の職業を選び「底辺の仕事」としてランキングを発表しました。13の職業には、土木・建設作業員、トラック運転手、ごみ収集スタッフ、保育士などと共に、私たちが一緒に仕事をしている工場作業員も入っていました。

このサイトによれば、これらの職業は、肉体労働が主で、誰でもできる仕事とされ、また結婚において困難さを伴い、同じ作業の繰り返しや低い年収などの理由から「底辺」にランク付けしたとのことです。

しかし、土木・建設作業員がいなければ道路や建物の建設ができず、トラック運転手がいなければ物流に支障が生じ、ごみ収集スタッフがいなければ衛生面で問題が発生し、また共働きの家庭では保育士が必要です。そして工場作業員がいなければ一切の工業製品は生まれません。ここに登場した職業は社会において極めて重要な存在です。

私はこのランキングに対して強い不快感を持ち、めったにないことですが、かなり腹を立てました。なぜなら、この発言は「職業に貴賎なし」の考え方を無視している上に、私たちの仕事に対して極めて失礼な言葉を使っているからです。

私自身は製造業の出身です。社会人になった時、製造業でモノを作ることに魅力を感じ、自動車会社に入社し、希望通り工場の現場の仕事に就くことができました。そこで多くの製造現場の仲間と共に働き、モノづくりの喜びを知りました。製造の仕事は、誰でも簡単にできるものではなく、専門的なスキルと知識が必要で、このサイトの発言は偏見と悪意に満ちていると感じます。実際、この記事はネット上に掲載されるとすぐに、読者から強い批判を浴び、サイト上からは既に削除されています。しかし、ひとたびネット上に掲載された情報は消えることはなく、別の人が「魚拓」として保存して残しているので、今後も読まれる可能性があります。

最初は、これは一部の偏った情報に過ぎないので無視しようと考えましたが、もし生産の現場で頑張っている人がこの記事を読んで悲しい気持ちになったり、将来の若い世代が製造業を避けるようになったりしたら、問題が発生する可能性があると気付きました。

一般的に製造業の魅力が若い人達に伝わっていないのも事実だと思います。私が感じたモノづくりの面白さなども知ってもらえたらと思いますが、それ以外にも、以前は3Kと言われていたが今はどうなのか?現場で働いて何が身に付くのか?将来の生活設計が立てられるのか?などが具体的に見えるようになることが、今は求められています。

私はこれまで品質、生産性などをカイゼンして良い経営ができるようにすることに注力していましたが、これからは若い人たちが製造業という分野でのキャリアに魅力を感じるような環境を提供できるような面にもカイゼンの眼を向けて行こうと決めました。そしてこの考えを経営者の方々とも共有し、会社の魅力をアピールし、より多くの若い人にモノづくりに興味を持ってもらい、仲間になってもらうように努力していきたいと思います。