新しいモノづくりの考え方 第7回

これからの日本式デジタル化⑥

これまで5回、―これからの日本式デジタル化― のサブタイトルで文章を書きました。アナログ人間の私がデジタル化について文章を書くにあたり、私はまずは工場にあるデジタル化にかかわるネタを探しました。しかしその後、改めて自分の身の回りを見てみると、日常生活レベルでも以前からしっかりとデジタル化の恩恵を受けていたことに気付きました。

例えば健康オタクである私の健康管理の必需品の一つにスマホアプリの万歩計があります。どなたのスマホにも入っている普通の万歩計なのですが、これぞDX(デジタルトランスフォーメーション)といえる優れた機能を備えていることに改めて気付きました。今回はこのことについてお話ししたいと思います。

コンサルタントは、個人で組織を相手に仕事をします。もし私が体調を崩して休むとなると多くの方にご迷惑をおかけするので、健康でなけなければなりません。そのために私はコンサルタントになった30年前から、毎日1万歩を歩いて健康管理をすることを目標にしてきました。「なるべく1万歩」ではなく、基本的には「必ず1万歩」で、どうしても歩けない場合は次の日に不足分を補うというルールです。

昔の計測器具はアナログで歩行数をカウントするだけのシンプルな万歩計でした。今日一日の歩行数しか分からないので、歩行数が減少傾向になった時に早めに気付きたいとか、季節ごとの変化を知りたいということのために、毎日の歩行数をノートに記録することにしておりました。しかし、しばしば記録をし忘れてしまうし、その日の歩数以外はすべてその都度計算なのでタイムラグがあり、管理情報としてはほとんど生かせませんでした。計算するのが面倒な上に、数値が正確でなく、過去の問題が今分かったところでもう遅いということで、機能しなかったのです。今考えると目標は達成できていなかったと思います。

今はスマホのデジタル万歩計アプリを使っています。どちらもデータは同じ歩行数を使っているのですが、デジタルアプリ版はそれから派生するあらゆる情報を同時に計算してリアルタイムで示してくれるので、健康管理の精度とモチベーションを大幅に上げてくれています。例えば今日・今週・今月・今年の歩行数、歩行距離、消費カロリー。更に驚いたことに同時に歩いている同年代の男性の平均歩行数まで表示されます。それも数字だけでなくグラフでも表示されるのです。今の状況が一目で分かりすぐに対応でき目標達成が極めて容易になりました。その結果、この一年間の平均歩行数は12075歩と、目標を軽々クリアーできています。

「歩行数」を例にあげて身近なデジタル化をご説明しましたが、同様に「品質」の推移がリアルタイムにスマホで分かるとしたらどうでしょう。不良発生の状況がリアルタイムで表示されれば、その日のうちに対応が行われ、結果が報告されるでしょう。そして、毎日の品質管理の結果が自動的に集計されて月ごとの比較や目標との比較で表示されたら対応の速度はどれだけ速くなるかははかり知れません。これまで死亡報告会議などといわれながらも毎月一回開いていた品質会議は意味がなくなるでしょう。一月前の品質状況を今知ることにはほとんど意味がないからです。「稼働率」「在庫数」「売り上げ」なども同様です。あらゆる指標の変化がほぼリアルタイムに入手できるとすればどれだけ機敏に経営判断ができるかは明らかです。

会社の情報が昔の私のアナログ万歩計レベルなのか、それとも今のデジタル万歩計レベルなのか?で結果に大きな違いが生まれます。

現場にある情報を上手に吸い上げて、それを同時にいろいろな目的の数字に置き直して必要な人が同時に見ることができる。そしてこのようなことがパソコンでできる時代になっています。これが製造業におけるDX化の第一歩であり、経営力を格段に上げるツールとして使えます。現場でニーズを吸い上げて、これらの地に足が着いたデジタル化を始めましょう!