4月のご挨拶

4月になりました。新年度が始まり、初々しい新入生や新社会人の門出を祝う季節です。本来であれば、そんな明るい話題から書き始めたいところです。

しかし、最近のニュースを見ていると、どうしても気持ちが沈みがちになります。原材料の高騰、人手不足、先行きの見えない世界情勢…。企業を取り巻く状況は、決して楽観できるものではありません。

こういう時には、つい「困ったな」「どうしよう」と考えてしまいます。けれども、ここで一度立ち止まって考えてみたいのです。世の中の大きな流れはすぐには変えられませんが、自分たちの現場の雰囲気や仕事の進め方は、工夫次第で変えられるのではないでしょうか。

私は長年、現場カイゼンに携わってきましたが、その中で強く感じていることがあります。それは、うまくいっている現場ほど「楽しそう」であるということです。「うまくいっているから楽しい」という面もありますが、「楽しそうだからうまくいく」といったことも多いのではないかと感じています。

現場が明るいと、自然と会話が増えます。会話が増えると、ちょっとした気づきが共有されます。その積み重ねが、厳しい状況を乗り越えるアイデアにつながっていきます。こうした「楽しさ」は、自然に生まれるのを待つのではなく、意識して作り出すことが必要です。

コロナ禍の際、私たちは物理的な距離を取り、直接の会話を避ける生活を経験しました。その結果、WEB会議などの便利な手段は発達しましたが、顔を合わせて笑い合うようなコミュニケーションは、まだ十分には戻っていないように感じます。昼食も、それぞれが自分の車の中で、一人で食べる。それも一つの形ですが、毎日それでは少し寂しい気もします。

こうした状況を背景に「社内の“遊び”」に注目が集まっているという記事を目にしました。先日の東京新聞によると、株式会社IKUSAは「チームビルディング」をテーマにした社内研修やイベントを提供しており、テレワークによるコミュニケーション不足を課題と感じる企業が、「面白いこと」を取り入れて社員の活性化を図っているそうです。そして何とこの会社に対するイベント依頼が年間千件以上あるのだそうです。私はこれを見て、とても納得しました。時代が変わっても、「人と人とのつながり」が大切であることは変わらないのです。だからこそ、意識して「楽しい場」を作ることが必要ではないでしょうか。

例えば、近年敬遠されがちな社員旅行や飲み会です。やり方を変えれば今の時代に合った形にできます。年代ごとに分かれて気楽に参加できるようにする、行き先だけ決めてあとは自由行動にする、若い人たちに企画を任せる――こうした工夫によって、「行きたくないもの」が「行ってみてもいいかな」に変わることがあります。

もちろん現実には、人との関わりをあまり望まない人もいます。そうした人たちに参加を強要するのではなく、それぞれの考えを尊重することが前提です。

また、雑談の時間をあえて設けたり、ハイキングやゴルフ、釣りのような身体を使う活動を取り入れるのも一つです。デジタルが進んだ今だからこそ、こうした時間の価値はむしろ高まっているように思います。

人と人との距離が近づくと、普段は言えないことが言えるようになり、そこから新しいアイデアが生まれます。実際に現場では、何気ない会話から思いがけないカイゼンが生まれることも少なくありません。

世の中がどのような状況であっても、現場の空気が明るく前向きであれば、仕事の質は確実に上がります。そして、「この会社で働いていてよかった」と思える瞬間が増えていきます。楽しいからうまくいく。うまくいくように工夫するから楽しくなる。その両方があるのだと思います。

暗い話題が多い今だからこそ、私たち自身の手で、明るく楽しい職場を作っていきたいものです。


日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫