
大企業でトップの目標達成圧力が強すぎて、「達成できません」と言えず不正を働き、それが表に出てトップが辞任する――そのようなニュースが最近メディアで大きく取り上げられています。
目標達成は企業にとって最も重要な仕事の一つですが、その道筋は決して単純ではありません。無理な目標の実行を強く命令すれば現場は追い詰められ、冒頭のような企業を一瞬で破壊する事件につながることもあります。逆に目標をしっかり示さなければ、組織は動かず、企業はいずれ競争の中で淘汰されてしまいます。目標の作り方と指示のし方は、経営においてとても重要かつ難しい課題だと思います。
3月は年度末であり、同時に次年度の目標を示す月でもあります。この時期になると、多くの会社で新年度の目標が作られます。よくあるのは、昨年とほとんど同じ内容で数字だけを書き直した目標です。生産性や品質の向上は常に重要な課題ですから、それ自体は決して悪いことではありません。しかし、そのようにあまり変わり映えのしない項目だけでは、これからの変動の時代には不十分なのではないでしょうか。環境が変わる中で、会社として新しく取り組むべき活動が必ずあるはずです。
実は私自身、昨年、自分の生活を見直す必要のある出来事がありました。私の子供たちから、仕事ばかりしてないで家族との時間を増やすようにしてほしいという要望です。そして仕事以外の楽しみや休む時間ももっと作って欲しいということでした。これは仕事の目標を達成するということよりも私にとっては難しい問題でした。有限である時間を今一度考え直し、仕事の品質を落とさずに家族との時間も増やさなければならないとなるとどのような方法があるか…、難しいテーマでした。
仕事の質を落とさず短時間で仕事を終えるために、今回改めてこれからの生活を見直し、まずは仕事と健康と生活のワークライフバランスを再構築することにしました。
仕事の時間に集中力を高めるために休む時間と働く時間のメリハリをつけることから考えて、睡眠の質を高めることを考えました。寝る前に「頭からっぽ、身体クタクタ」の状態を作るとよく眠れるというアドバイスを受け、就寝前に30分のインターバル速歩をするという、少しハードな運動を目標にしました。
(https://tarzanweb.jp/post-360361)
また休む、楽しむという点では、これまでの時間があるとすぐ仕事をしてしまうという仕事偏重の頭を少し変えようと思い、1年間で25本の映画を観るという目標を立てました。これは何をすれば良いか悩んでいた時に、子どもたちがくれたタイムリーなアドバイスでした。
半年ほど経ちましたが、今も継続しています。なぜ続いているのかを考えると、まず自分自身もその必要性を感じていたこと。そしてもう一つは、家族からの期待に応えたいという思いからでした。これは自分の目標と周りからの期待に応える目標の両立という点でとても良い経験になりました。
納得できないことを人から命令されてやることは長く続きません。自分が意味を理解し、やろうと思える形でなければ継続することは難しいと思います。
これは企業の目標にも同じことが言えるのではないでしょうか。時代が変わる以上、状況や条件などが日々変わるのは常識です。トップが数値目標だけを示して「必ず達成しろ」と命令するだけで、現場は毎回期待に応えてくれるでしょうか?経営者の役割は、数字を示すことだけではなく、その目標の意味を伝え、それぞれの社員のことも考慮した上でどうすれば実現できるのかを現場と一緒に考えることにあると思います。
3月は、次の一年を考える大切な時期です。目標とは単なる数字ではなく、会社の進む方向を示すものです。実行する側の現場の人たちから見たときに、彼らがその意味を理解でき、自分のためだけでなく、周りの願いに対する期待に応える形になっていると感じられることが大切です。そう感じられる目標であると、人は力を発揮します。ぜひ現場の人たちと一緒に目標を考え、本当のカイゼンにつなげていただきたいと思います。
日本カイゼンプロジェクト
会長 柿内幸夫