前回(第19回)は、キーパースンがボトルネックになっている場合にその対処策を見える化するやり方を紹介しました。プロジェクトのスケジュール図で表現するとわかりやすい見える化ができました。少し前の第17回では、現有メンバー全員の総合力を発揮するために、進ちょく状況に余裕のあるプロジェクトから一時的にメンバーを移動させるやり方、つまり安心して他のプロジェクトを応援するやり方を紹介しました。そして、筆者はこのようなやり方を「フレックス法」という名前をつけていることをお伝えしました。
ところで、コロナ禍に伴い「テレワーク」が急速に進展しています。この動きは後戻りすることはないでしょう。オフィス勤務無しで全ての業務を自宅でおこなうことは難しく見えます。しかし、単に慣れていないだけであり、プロジェクトなどはテレワークのほうが有利なところがあると筆者は考えています。それとは別に、テレワーク時代は「言語化スキル」が特に重要になってきます。今回は、言語化スキルの一部として名前をつけることの重要性をお伝えします。
【1】言語化スキル
言語化とは、言葉で表現すること。無形の概念や構造あるいは感情や直感などを説明することです。自分の考えていることを相手にわかりやすく伝えることでもあります。会議での口頭説明や議事録などの文章化も言語化スキルが大いに関係します。テレワークでは、オフィス内での口頭説明ですませていたことも言語化が必要になります。従来よりも文章での説明や記録が飛躍的に増加することになるでしょう。本稿でとり上げる「名前をつける」ことも言語化スキルの重要な一部となります。
【2】フレックス法
第17回で紹介したフレックス法とは、進ちょく状況を見える化してメンバーをプロジェクト間で柔軟に移動させるやり方でした。柔軟(flexible)からフレックス法という名前にしました。
社内で複数のプロジェクトが進行しています(プロジェクトでなく、普通の業務でも同様です)。納期に赤信号が点いているプロジェクトに、他のプロジェクトからメンバーを移動させ応援することがフレックス法です。 もちろん、前提として移動させるメンバーが同じスキルを持っていることが必要です。
【3】シンクロ法
シンクロ法とは、キーパースンがボトルネックになっている場合に使えるやり方です。ボトルネックの能力をフルに活用するため、他のメンバーはすべてキーパースンに従属する、つまりキーパースンの都合に同期(synchronize)して行動します。ここからシンクロ法という名前にしました。説明図は前回(第19回)と同様です。
筆者の企業では、TOCによるプロジェクトマネジメントを米国企業から技術導入しました。今回紹介したことは、そのとき学んだことの一部です。しかし、重要な技法や概念であるにも関わらず、名前の無いものがいくつかありました。名前が無いことは、その意味や価値が認識されていないことであると考えていくつか名前をつけました。
名は体を表す。的確な名前をつけることは、そのことの進歩や発展を促進します。