
Q5. 5Sなどが一通り浸透してきました。会社で重要なものは「人、モノ、金」などと言われますが、カイゼンに重要なものはどのようなことで、カイゼンはどのようなことに重きを置き始めればよろしいでしょうか?
A5. 私にとって最初の判断基準は、「今すぐできるものからどんどんやる!」ことです。私はカイゼンとは「すぐやること」と定義しています。考えてばかりで動かないカイゼンでは意味がありません。小さくてもすぐできることを見付けて実行する。この「すぐ始める」ことの積み重ねが、カイゼンの基本になります。
会社にとって重要なのは「人、モノ、金」ですが、カイゼンにおいて重要なことは速度感、継続性、達成感の共有、失敗を恐れない心、などだと考えています。
そのうえで次の判断として、「人、モノ、金」という視点からのカイゼンを、私なりの考えで整理してみたいと思います。一般に会社の経営資源は「人・モノ・金」と言われますが、製造業の現場では特に人の働き方とモノの流れが重要になります。トヨタ生産方式でも、人とモノの流れを良くしていくことがカイゼンの中心とされています。そして、言うまでもありませんが、経営では金の生み出し方や使い方が評価されます。
まず「人」とは、能力(技能・知識)、やる気(モチベーション)、人数(人員配置)、教育・育成といったことです。次に「モノ」としては、原材料、部品、製品、在庫、設備、工具、建物などが挙げられます。そして「金」は、売上、利益、キャッシュフロー、資金繰り、投資といったことになります。
ここから分かることは、それぞれが独立してカイゼン対象になるのではなく、実際のカイゼンは人・モノ・金が互いに強く連動しているということです。人のカイゼンが進めばモノの流れが良くなり、結果として金のカイゼンにもつながります。したがって、厳格にこの順番で進めなければならないというものではありません。
しかし、あえて順番を考えるのであれば、私はまず人のカイゼンから始めたいと思います。理由は、カイゼンは常に人が実行するものだからです。現場の人が「楽になった」「やりやすくなった」と感じるカイゼンは、自然に次のカイゼンを生み、活動を広げていきます。肉体的に楽になることはもちろんですが、品質が安定して精神的に楽になる、生産にリズムが生まれて仕事がしやすくなる、あるいは自分の成長が感じられて仕事が楽しくなるといったことも含まれます。人が「働きやすくなった」と感じるカイゼンは、次のカイゼンを生み出す力になります。
次に取り組みたいのは金のカイゼンです。カイゼンによって不要な在庫を持たないようにすることなどによって在庫を減らしキャッシュを生み出すことは非常に重要です。経営を安定させ会社が継続していくためには、キャッシュがあることが前提になります。しかし、このカイゼンの必要性は生産現場では見えにくいため、その重要性をしっかり教育するなどのステップが必要です。また、「この機械が欲しいが金がかかる」という場合では、投資額とリターンをしっかり計算し、経営に貢献できるのであれば挑戦する価値があります。節約を前提として古い機械をだましだまし使い続けるのは結果として経営に悪影響を与える可能性があります。
最後にモノのカイゼンです。材料のようなモノは為替や市況、物流などの影響も受けやすく、自分たちの判断だけで決められない部分が少なくありません。そのため、もし順番を考えるのであれば、人と金のカイゼンで土台を整えたうえでモノのカイゼンを進める方が取り組みやすいと考えています。もちろん、品種を減らしたりロットサイズを小さくすることで在庫を減らすことや、運搬や詰め替えを減らすなどしてモノの流れを良くし、管理を楽にすることはどんどん進めていきます。
大切なのは、まずすぐできることから始めることです。そして、速度感、継続性、達成感の共有、失敗を恐れない心といったカイゼンの基本姿勢を大切にしながら、人・モノ・金という視点でカイゼンを積み重ねていくことです。この積み重ねが現場を強くし、会社全体の力を高めていくのです。