脱力・カイゼントーク 第130回

カイゼンと経営の関係を考える 18(最終回) カイゼンに終わりなし

このシリーズでは、「カイゼンは現場の活動でありながら、経営そのものでもある」という視点で考えてきました。ムダ取り、5S、あるいは段取りカイゼンといった日々の工夫は、現場を強くします。ただし、成果を経営につなげるには、見える化、設計、デジタル、価格といった領域まで視野を広げる必要があることも見えてきました。

まず大切なのは、問題が見つけられることです。問題がない現場が必ずしも強いのではありません。問題が見えた時に、隠さずに表に出せる人がいる現場が強いのです。さらに、見えた問題を責める材料にせず、次の成長の種として扱えるかどうかで差がつきます。その空気をつくるのは、その現場だけではなく経営者の姿勢も必要不可欠です。タイムリーな経営者の一言が、現場に勇気を与え、行動を変えます。私はこれまで多くの現場でその変化を見てきました。

次に、設計を変えることが経営を変える、という話もしました。多品種少量の厳しさを、現場の頑張りだけで吸収し続けるのは難しい。段取り替えをカイゼンし、多能工化を進め、スケジューリングを工夫しても、それでも苦しいときがあります。そのときは「つくり方」だけでなく、「つくるもの」そのもの、つまり製品設計や仕様を見直す段階です。製品は多品種でも中の部品は共通化できる。過剰な個別対応を減らし、品質と供給力を上げる。これは技術論であると同時に、経営の意思決定です。設計・営業・技術・製造が同じテーブルにつき、経営面から最適な構成を探すカイゼンが欠かせません。

ロボットやデジタルの話では、「人が不要になる」のではなく、「人の役割が変わる」ことを強調してきました。単純作業を機械が担うほど、人は異常への気付き、カイゼンの発想、段取りの工夫といった「人にしかできない仕事」に集中できます。人手不足を「人不足」と「手不足」に分けて考えると、ロボットは「手不足」を引き受け、人の力を「人不足」の領域へ戻してくれる存在です。さらに、機械を単なる設備ではなく「一緒に働く存在」と捉えられる現場ほど、カイゼンが生まれやすい。人と設備の関係を良くすることも、立派なカイゼンです。

シリーズ後半では、価格改定も取り上げました。現場でムダを減らしても、価格が据え置かれたままでは限界があります。賃上げも、教育も、カイゼン投資もできない。これは現場の問題ではなく、経営の問題です。価格改定とは単なる「値上げ」ではありません。自社が提供している価値を言葉にし、数字で示し、取引先と協議して、正しく評価してもらうことです。現場が積み上げてきた努力を付加価値につなげるための「経営のカイゼン」だと私は考えています。

では、付加価値はどこから生まれるのか。付加価値は必ずしも「新しいもの」だけから生まれるわけではありません。設計や仕様を整理し、共通化してコストを下げ、品質を安定させ、供給力を上げる。過剰品質を見直し、お客様が本当に求める価値に集中する。その結果としてのコストダウンは、価値を落とすどころか、むしろ価値を高めることがあります。カイゼンとは、効率を上げる活動であると同時に、「価値の中身を問い直す活動」でもあると思います。

最後に、なぜ「カイゼンに終わりなし」なのか。それは、現場に問題が尽きないからではありません。顧客の価値観が変わり、市場が変わり、技術が変わるからです。昨日の正解が、明日も正解とは限らない。

だからこそ、小さなカイゼンを積み重ね、それを経営につなげていく。その積み重ねが会社の体力をつくり、働く人を守り、次の投資を生み、未来につながっていく。「カイゼンに終わりなし」はそういう意味なのだと、私は信じています。

18回にわたる「カイゼンと経営の関係を考える」の話は今回で終わります。次回から新たなシリーズを始めます。ご期待ください。