
製造業と比べると、サービス業の方が、デジタル化が進んでいると感じる場面が多くあります。たとえばファミリーレストランに入ると、昔は「待つ」ことは当たり前でした。メニューを見て注文を決め、店員さんを呼んで来るのを待ち、口頭で伝えて、伝票に手で書いてもらい、厨房に通すのを待ち、料理が運ばれてくるのを待つ。食後はレジに並び、担当者が伝票を打ち込み、現金のやり取りをする——「紙の伝票」が生む「待ち」と「人の移動」が、あちこちにありました。
今は、メニューを見て注文内容を決めたらタブレットに入力し、しばらくすると配膳ロボットが料理を運んでくれます。食事が終われば席でそのまま精算できる店もある。お客様の待ち時間は、圧倒的に短くなりました。お店側も、人が歩き回っていた距離と時間が目に見えて減っています。
そして、以前は夜遅くに行くと、店長が大量の伝票をめくりながら電卓を叩き、売上を集計している姿をよく見かけました。ところが今は、注文がすべてタブレット入力ですから、時間ごとの売上や客数はリアルタイムで見える。作業工数が減っただけでなく、店長の「経営判断のレベル」そのものが上がっていると感じます。
例えば、すかいらーく系列のファミリーレストランに入ると、各席のタブレットや配膳ロボットが当たり前のように働いています。人手不足対策として導入されたものですが、現場をよく見ると、その効果は単なる「省人化」にとどまっていません。
私は「人手不足」という言葉を、二つに分けて考えています。ひとつは、その人にしかできない重要な仕事をする時間が足りない〈人不足〉。もうひとつは、誰でもできる作業をする“手”が足りない〈手不足〉です。ロボットが担っているのは、重い料理を運び、長い距離を何度も往復する〈手不足〉を埋める仕事です。これは若い人にとっても負担が大きく、高齢者にとっては特に難しい作業でした。しかし、その部分をロボットが引き受けたことで、体力に不安のある高齢者でも働きやすい環境が整いました。実際に、すかいらーくではシニア層の採用が増えています。電卓での大量の数字計算も同様で、手作業を減らして店長の考える時間を増やしています。
ここで重要なのは、「人を減らした」のではなく、「人の役割を変えた」という点です。重いものを運ぶ仕事が減った分、高齢者が本来持っている接客力や気配り、若手への助言といった力が前に出てきます。体力面だけを見れば「難しいと判断されがちだった人材」が、ロボットによって「価値を発揮できる人材」へと変わったのです。言い換えると、ロボットは人を置き換えたのではなく、人の強みが出る場所を空けてくれた。ここにカイゼンの本質があるといえます。
この考え方は、製造業にもそのまま当てはまります。ロボットや自動化設備を導入すると、「人の仕事がなくなるのではないか」という不安が出てきます。しかし、うまくいっている現場ほど逆です。段取りの工夫、異常への気づき、改善アイデアの発想、後輩の育成——こうした「人にしかできない仕事」をはっきりさせ、そこにカイゼンを集中させて成果を上げています。ロボットが増えるほど、人の仕事は減るのではなく、仕事の中身が「価値の高い側」にシフトしていくのです。
ロボット導入の目的は、生産性を上げることはもちろんですが、人の力を、より価値の高い仕事に振り向けられるようにすることでもあります。カイゼンとはムダを取る活動であると同時に、人の力を活かす活動でもあります。ロボットが増える時代だからこそ、現場で働く人の価値は下がるどころか、むしろ高まっていく。その視点を持てるかどうかが、これからの経営の分かれ道になる——私はそう考えています。今発揮できていない付加価値を人によって生み出すようにするのです。
次回は、さらに一歩進めて「ロボットと人との共生」を考えてみたいと思います。