脱力・カイゼントーク 第125回

カイゼンと経営の関係を考える 13 自社をアピールする

自社のことをまだ知らない会社や人に、自分たちの存在を知ってもらう。そのための手段として、効果的なのがウェブサイト(ホームページ)です。顧客にとっても、ユーザーにとっても、求職者にとっても、最初に会社を知る入り口は、多くの場合企業サイトになっています。

ところが、製造業の状況を見ていると、ウェブサイトにあまり力を入れていない会社が少なくありません。ウェブサイトの活用について聞いてみると「仕事は紹介で回っている」「営業が直接説明すればいい」「人が欲しければ求人誌やハローワークに出せばいい」といった答えが返ってきます。しかし私は、それは非常にもったいないことだと感じています。

O社は、これまで売り上げが好調で、生産能力を上回る受注が常にあり、営業の面ではウェブサイトの必要性を全く感じていませんでした。求人についても求人誌やハローワークによる募集で問題ありませんでした。しかし営業は価格競争が激化し注文が取りづらくなり始め、求人も少子高齢化などにより人手不足が顕在化し、求人誌やハローワーク中心の求人だけでは十分な人材が集まらなくなったことで、改めてウェブサイトを整える必要性に気づきました。

企業サイトは、単なる会社案内ではありません。「自社の製品や技術のどこが強みなのか」「他社と何が違うのか」「どう行った製造設備を持っているのか」などを、言葉や写真、動画を使って伝えられる場でもあります。長年積み重ねてきたカイゼンの取り組みや、品質へのこだわり、現場の工夫といった「目に見えにくい価値」を、初めての人にも分かる形で伝えることができます。これは、名刺交換や短い商談の場では、なかなか伝えきれない部分です。

また、ホームページは「働く場」としての会社の魅力を伝える重要なツールでもあります。いまの若い世代は、給料や休日数だけで会社を選んでいるわけではありません。ここで働くとどんな良いことがあるのか、どんな人が働いているのか、どんな考え方の会社なのか、自分が入社したらどんな仕事をするのか。そうした情報を、事前に知りたいと考えています。現場で働く人の声や、仕事の流れ、カイゼン活動の様子が伝われば、「この会社で働いてみたい」と感じてもらえる可能性は確実に高まります。

特別に立派なデザインである必要はありません。大切なのは、自社の言葉で、自社の強みを正直に伝えることです。「うちは普通の町工場だから特別掲載できることがありません」と言われることがありますが、その「普通」の中にこそ、他社にはない魅力や物語があります。日々の改善を積み重ね、現場を大切にし、人を育ててきた歴史は、それ自体が立派なアピール材料です。

先ほどとは別の企業ですがS社には立派な社員食堂があり、社員は3種類の定食から好きなものを選べ、しかも非常に安価です。5年前にできた食堂で、社員の皆さんはとても喜んでいます。ところが、そのことが企業サイトには一切載っていなかったのです。私が不思議に思って総務部長に話したところ、「気が付きませんでした」ということで、すぐに掲載されました。すると、早速求人の件で数人から問い合わせがあったそうです。会社が人を大切にしている姿勢が、きちんと外に伝わった結果だと言えるでしょう。求人誌に載せられる情報は限られていますが、企業サイトにはそれを十分に補える情報を載せられます。「車通勤ができる」「制服の洗濯は会社でする」といったメリットがあれば全て記載するべきです。

カイゼンとは、現場のムダを取ることだけではありません。会社の魅力が伝わっていないという「気付かないムダ」を取り除くことも、立派なカイゼンです。ウェブサイトを通じて、自社の製品、自社の仕事、自社で働く価値を丁寧に伝えていく。その積み重ねが、新しい顧客との出会いを生み、次の仲間を呼び込み、結果として経営を助けてくれる強力なツールになります。

自社をアピールすることは、決して遠慮することではありません。むしろ、これまで積み上げてきた努力を、きちんと外に伝える責任だと私は思います。企業サイトは、その第一歩として、製造業にこそもっと活用してほしい、大切な経営の道具です。