
今回は「欧米の経営と日本の経営スタイルの違い」から、カイゼンと経営の関係を考えてみたいと思います。
よく知られているように、欧米の言語は I、You といった明確な主語があり、責任の所在がはっきりしています。また、Yes、No が先に来て結論がわかりやすい構造になっています。ビジネスの場でも “誰が・何を・いつまでに” が明確で、仕事のプロセスがはっきりしています。言語の特性がそのままマネジメントに反映され、意思決定も議論もロジカルでスピーディです。
一方、日本語には主語が省略されることが多く、「まあまあ」「ほぼ」「可能な限り」といった曖昧な表現もよく使われます。結論が最後まで聞かないと分からない上に、主語に「我が社」「みんな」といった言葉が使われ、誰が責任者か明示されないまま会話が成立してしまうことさえあります。ところが、日本人同士ではそれでもなぜか意思疎通ができてしまいます。“共有された空気”“暗黙の了解”を頼りに調整し合う文化があるからです。この言語の違いは、そのまま経営姿勢の違いとしても表れています。
欧米の経営は主にトップダウンで、経営戦略を基点に組織を動かします。例えるならボート競技(エイト)のようなものです。漕ぎ手である部下はコックス(指揮者=社長)だけを見てオールを漕ぎ、自分で進行方向を確認することはありません。部下同士の会話もほとんどなく、社長の号令のみで動きます。まっすぐ高速で進む強さがある反面、指示を誤れば全員が一緒に誤った方向へ進むリスクもあります。
対して日本の経営は、トップダウンとボトムアップが混ざり合った独特の形をしています。イメージは「お神輿」です。神輿の上に乗った社長が大まかな方向を示し、その後は疲れた人がいないか、バランスが崩れていないかを見ながら正しい方向に向かうための指示を出します。担ぎ手である現場は仲間同士で声を掛け合いながらバランスを調整し、状況に応じて持ち方を変えながら進みます。部下は社長だけを見るのではなく、横の仲間や現場の状況も見ながら動くのが特徴です。
この違いは、現場の取り組みにも鮮明に表れます。
たとえば、私がお手伝いしている会員企業の T社では、社長は常に「お客様に良品を届けること」を最優先の方針として掲げています。欧米的なアプローチであれば、「品質保証部と生産技術部に任せる」という形で明確に責任者を決め、トップダウンで進めるでしょう。しかし T社では、小集団活動として、生産現場・生産管理・設計・技術・調達・営業・品質管理のメンバーが定期的に集まり、「自分たちはこう貢献できる」とテーマを持ち寄ってカイゼンを継続してきました。先日の発表会では、その取り組みの結果、3年前と比べて不具合の発生が5分の1になったという報告がありました。
「社長が方向を示し、現場が知恵を持ち寄ってカイゼンを実行し、その成果を社長に報告する」――まさに日本型のカイゼンの力です。このアプローチは基本的に日本独特のものであり、欧米でそのまま実現するのは容易ではないように思います。
どちらの方式が優れていると単純に言い切れるものではありません。欧米型はスピードと明確さが強みですが、現場の知恵を拾いにくい。一方、日本型は調整力と粘り強さが強みですが、意思決定の遅さにつながることもあります。
世界規模で見た場合、日本人の協調性は高いと言われてきました。そういった点も、お神輿型の経営が成立する理由なのではないかと感じています。その一方で、「自分のやり方を強く貫くタイプ」や「突出した個性を前面に出す人」は、少なくともこれまでの日本の職場環境ではあまり目にすることが少なかったのかもしれません。ところが、スポーツ選手などを見ていると、若い世代には個性が強く、ユニークなキャラクターを持つ人たちが確実に増えてきています。こうした新しいタイプの人材の登場が、日本のお神輿経営のあり方に、次の変化をもたらす可能性も感じています。
私は、なんでも世界と同様ではなく日本型の経営だからこそ可能な、現場のカイゼン活動が経営を支えるやり方には、大きな強みがあると考えています。社長が大枠の方向を示し、現場が自分たちなりの工夫で応え続ける――そして若い世代の強みも何かしらの形で会社の魅力とする。その積み重ねこそが、日本の企業を支えてきた力でありこれからの日本の力だと確信しています。これからもカイゼン活動を使って経営力を向上させていきましょう!