脱力・カイゼントーク 第115回

カイゼンと経営の関係を考える 3適性在庫の考え方

前回、在庫はゼロを目指すのではなく、適正在庫を目指すことが大切だとお話ししました。今回は、その適正在庫にどう近づけていくかについてお話しいたします。まず取り組むべきは、現状把握です。

現場の人たちが、自分たちの身の回りにいつの間にか居ついてしまった「動かない在庫」や「多すぎる在庫」の存在に気づくことが出発点になります。常に持っている必要のないものを探し出し、それを経営者に伝え、経営者が迅速に判断してカイゼンに着手する——この流れが理想です。在庫は継続して管理すべき重要課題です。現場の隅々で起きている現実を経営に正しく伝えることで、経営判断の質を高めることができます。

ここで、私がこれまでに経験した「在庫あるある」をいくつかご紹介します。意外とどの会社にも共通するものが多いので、参考にしていただければと思います。これらを頭に置いて現場を見直すと、いろいろなカイゼンの切り口が見えてくるはずです。

• 先入れ先出しができておらず、古くて使えないものが残っている。
• 共通部品のはずが、実際には製品A用とB用で別々に発注・保管され在庫が膨らんでいる。
• 生産量が多かった時代の品種設定がそのままで、今の需要に対して品種数が過大になり在庫を抱えている。
• 不良の手直しが進まず、手直し待ち品が滞留している、再研磨予定のドリルが放置されている、端材が活用されず大量に残っている。
• 同じ性能の材料をメーカー違いで同時に使っている。
• 生産/納入リードタイム、ロットサイズ、安全在庫、発注点などのパラメーターが昔のままで今の実態と合っていない。
• 缶やビンの開封ルールがなく、使いかけが各所に散在している。
• 切削チップやドリルなどが外から見えない個人管理になっており、使われないまま大量に滞留している。

(写真:各作業者の引き出しに使わない工具が大量に保管されていたケース)


これらの過剰在庫が生まれる根本原因としてまず挙げられるのは、在庫の状態が目で見える状態になっていないことがあります。同じものが一か所に収まらず複数場所に分散していたり、表示・ルールが不十分で「何が・どこに・どれだけ・どんな状態で」あるのかが目で見えない。この見えなさが在庫を積み上げます。まずは、現場の隅々まで歩いて全量をチェックし、所在・数量・状態・最終使用日・次回用途を確認して、「見えない在庫」を洗い出しましょう。

在庫のカイゼンは、単に減らすことだけではありません。現場が自分たちの手で「見えない問題在庫の存在」を見つけ出し、数字で示し、経営と共有することが同じくらい大切です。そこから会社全体で、「なぜ持っているのか」「どうすればよいのか」を考え、その上で表示方法やルール策定の対策を打つことができるようになります。

在庫を見える化し、整理・整頓し、必要な分だけを作る/買う。その積み重ねが、現場の仕事を楽にし、資金の流れを良くし、経営を健全にします。つまり、在庫のカイゼンとは「モノの流れ」を見える化して整えることで、「会社経営」を良くする活動なのです。現場が気づき、経営がそれを受け止め、行動に移す。このサイクルが回り始めたとき、在庫は「ただのモノ」から「経営を動かす資産」に変わります。その第一歩は、今日の現場で「止まっているモノ」を一つ見つけることから始まります。早速、現場に行って、見付けましょう!

最後にこの「このやり方がうまくいかない経営者あるある」を書きますね。

・ 報告した途端に「なぜこうなったのか?」「誰がやったのか?」と険しい表情で詰問し犯人探しをしてしまう。

犯人探しは逆効果です。「これからみんなで変えていこう!」と前向きに伝え、事実を共有して、対策を作り、カイゼン実行へとつなげるのが正解です。