
カイゼンという言葉は、しばしば「部品や工具の置き場所を整える」「作業動線を短くする」「不良を減らす」といった「現場での小さな工夫」と捉えられます。設備投資やDXがホームランを狙う大きな一打だとすれば、カイゼンはヒットの積み重ねです。ヒット一本では点は入りませんが、コツコツと積み重ねることで確実に点につながり、やがて勝利を呼び込みます。経営も同じで、一つの大きな施策だけでは安定しません。カイゼンのような日々の小さな積み重ねが企業を支える力になるのです。
ただし、現場の中だけで完結してしまうと、一部の成果で終わってしまい、経営全体には十分に活かされない可能性があります。例えば、3Sで在庫が減った結果、「棚にあったモノが減り、取り出しやすくなった」で終わってしまえば、それは現場の便利さにとどまります。しかし経営者が「これでキャッシュフローが改善し、資金繰りが安定する。だからこの活動を続けてほしい」と伝えれば、現場は自分たちの取り組みが会社を支えていると実感します。この「楽になった」と「経営が良くなった」をつなぐ橋渡しこそ、経営者の大切な役割の一つです。
また、現場で生まれた工夫には、全社に広げられる可能性を持つものが少なくありません。ところが、その現場だけで終わってしまうことはよくあります。これは実にもったいないことです。だからこそ、経営者は現場カイゼンの持つ力を理解し、意識を共有していく必要があります。もし経営者がその本来の意味を言葉にして示さなければ、現場の人たちは「少し楽になった」で満足し、成果がそこで止まってしまうでしょう。「このカイゼンを全社で展開すれば、もっと利益が増える」「お客様の信頼が高まる」と伝えれば、現場の取り組みは組織全体の力へと変わっていきます。
現場のカイゼン活動は日々積み重なっていますが、その価値を経営的な意味に置き換えなければ、成果は数字や経営戦略に結びつきません。経営者は、現場の小さな工夫を「経営資源の活用」として認識し、成果を現場と共に確認する必要があります。そして同時に、現場の側にも経営の視点を理解する努力が求められます。自分たちの工夫が経営にどう結びつくのかを学び、意識を共有することで、カイゼンはさらに意味を持ち、持続する力へと変わっていきます。
大切なのは、現場と経営者の両者が「カイゼンの意味」を共有することです。現場の「作業が楽になった」という実感から、経営者の求める「成果が数字に表れた」という結果まで、この二つを結び付けるための、ムダの排除、コストの削減、生産性や品質の向上など、時間や金、生産量、不良の数などそれぞれの数字を互いに認識できるようにすることで、カイゼンは全社的な力になります。さらに、その循環が続いていくことで「カイゼンが文化」として根づき、社員一人ひとりの成長にも直結します。
経営者が現場に寄り添い、現場が経営の方向を理解する。この両輪がそろって回り始めたとき、カイゼンは単なる効率化にとどまらず、企業を強くし、未来をつくる仕組みへと発展します。カイゼンは「現場の工夫」であると同時に、「経営の仕組み」でもあるのです。もし現場と経営が別々に考えてしまえば、せっかくのカイゼンは部分的な成果にとどまります。逆に、両者が共有すれば、カイゼンは企業を成長させる大きな推進力となっていくのです。