脱力・カイゼントーク 第112回

改めてカイゼンとは何か?を考える
第9回 改めて振り返る──現場と経営をつなぐカイゼンの流れ

これまで、「品質管理者に求められる資質」から始まり、「購買部門」「経理部門」、そして「改めてカイゼンとは何か?」という一連のシリーズでお話ししてきました。テーマは毎回異なっても、通して浮かび上がってきたのは、現場のカイゼン活動が単なる作業効率化にとどまらず、経営全体の成果と密接につながっているということです。今回はその総まとめをしたいと思います。

品質管理・購買・経理と聞いて、「現場カイゼンとの関わりは薄いのではないか」と感じた人も多いかもしれません。品質管理は「品質を上から管理し、現場に品質カイゼンを指示し、検査方法や規格を守らせる部署」、購買は「事務的にモノを買う部署で現場にはあまりいない」、経理は「帳簿を作るスタッフの部署」というイメージではないでしょうか。確かに、彼らは直接ラインに立って作業をするわけではありません。むしろ、現場からすると「口うるさく制約を課してくる人たち」と見られることもあるでしょう。ところが実際は、この3部門は現場カイゼンを経営に橋渡しする重要な役割を担っています。

品質を守ることは会社を守ること
品質管理の役割を考えるとき、単に不良を見つけて排除するだけでなく、「品質に妥協しない」という信念と、現場と歩み寄りながら品質を向上させ、信頼を築く柔軟さが必要であるとお話ししました。品質とは製品の性能や安全性にとどまらず、会社そのものの誠実さを現すものです。現場に寄り添い、共に考える姿勢があって初めて、品質は組織全体に浸透します。つまり品質管理者は、現場と経営をつなぎ、経営そのものを守る立場にあるのです。

購買は「ボランチ」、流れを支える要
購買部門をサッカーの「ボランチ」に例えました。営業・設計・生産・物流、そして取引先をつなぎ、全体の流れをスムーズに保つのが購買の役割です。単に「納期に間に合わせる力」だけではなく、在庫を抱えすぎない工夫や、事実と数字に基づいた交渉力が求められます。購買は裏方のように見えますが、実際には「モノと情報の流れ」を整えるカイゼンの要所であり、全体最適を支える調整役なのです。

経理は数字を伝えるだけではない
経理もまた、単なる帳簿係ではありません。まとめ買いや大ロット生産が一見効率的に見えても、実は資金繰りを圧迫するリスクがあります。そのリスクを現場に伝えるのは経理の責任です。経理が現場に財務的な視点をわかりやすく伝えることで、カイゼン活動の成果は数字となって経営に反映され、組織全体の力を底上げします。経理の役割は「数字を扱う」だけでなく、「数字を通じて現場を育てる」ことにあるのです。

カイゼンの定義を問い直す
「改めてカイゼンとは何か?」のシリーズでは、3Sやムダ取り、流れづくり、多能工化、デジタル化などを取り上げました。共通して確認したのは、カイゼンは「作業を楽にする小さな工夫」であると同時に、「人を育て、会社経営に貢献する行為」であるという点です。数字に現れる成果だけではなく、現場の人の成長や社会的責任の視点も含めた広い定義で捉えることが必要なのです。

経営と現場をつなぐ
振り返ってみると、品質・購買・経理の各部門は、一見カイゼンとは遠いように見えますが、実は現場カイゼンを経営に結びつける要でした。現場の工夫はそのままでは部分的なカイゼンにとどまります。しかし、それを品質の視点で鍛え、購買の流れで支え、経理の数字で裏付けることで、全社的な成果へと発展するのです。

結局のところ、現場カイゼンと経営をつなぐのは「人」であり、その人が日々の仕事を通じて培う気づきと工夫です。部署ごとの役割の違いを超えて、それぞれが一つの流れとして結びついたとき、企業は成長し、社会からの信頼を獲得します。現場カイゼンを経営に生かすことこそ、企業が持続的に発展するための原動力である──そのことを改めて実感しました。